巨人原監督が増田大輝内野手を投手として起用したことが、日本で論議を呼んでいるようですが、言うまでもなく、メジャーで野手の登板は珍しいことではありません。

6日の「インディアンス-レッズ戦」では、0-13と大差が付いた8回、レッズのマット・デービッドソン内野手(29)が登板し、1回1安打無失点1奪三振に抑えました。デービッドソンは2018年、3試合に登板し、通算3回を投げて1安打無失点1四球2奪三振の実績を持つ経験者。直前には、ブルペンで投手ばりに投球練習を行い、マウンドでも結果を残しました。

野手を起用するのは、過密日程の中で、救援投手の負担を軽減することが目的ですが、だからと言ってだれでもいいというわけではないはずです。15年10月4日のフィリーズ戦に登板したイチロー(マーリンズ)、17年6月3日のヤンキース戦で救援した青木宣親(アストロズ)にしても、高校時代は投手でした。そのイチローにしても、登板後は「2度と投手の悪口は言わないと誓いました。投手を途中であきらめて良かったと思います」と、投げることの難しさを振り返ったほどでした。投手経験のない選手が緊急登板すれば、肩や肘を痛める危険性もあるはずです。メジャーで野手登板が頻繁なのは、単なる思いつきではなく、あらかじめ登板可能な野手を想定しているからとも言えます。マリナーズ時代の川崎宗則内野手が、緊急時に備えて「第3の捕手」として練習していたのも危機管理の表れでした。

メジャーでは野手の登板だけでなく、投手の代打起用も珍しくはありません。打撃に定評のあるバムガーナー(ダイヤモンドバックス)、グリンキー(アストロズ)は何度も代打で出場しています。ドジャース時代の前田健太(ツインズ)は、代打で7打席出場。犠打を決めた際には「別に普通。でも、ちゃんと決められて良かったです」と、本職以外でもチームに貢献することを「普通」と捉えていました。ちなみに、運動能力の高い前田の場合、16年には代走としても起用されています。

野手の登板が「相手に失礼」という考えがあるのも理解できます。ただ、事前にいろいろな状況、緊急事態を想定したうえでの戦術であれば、異論を唱える必要はないような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)