エンゼルス大谷翔平投手が、4日(日本時間5日)の本拠地ホワイトソックス戦に「2番投手」として出場し、メジャーでもついに「リアル二刀流」が実現しました。マウンド上で珍しく感情を出し、投打にわたってイキイキと暴れ回っている大谷の姿を見ていると、あらためて人との出会いが大切だということを実感しました。

あくまでも仮定の話ですが、ひょっとすると、ジョー・マドン監督でなければ「リアル二刀流」に踏み切ることは難しかったかもしれません。

名将、知将、策士……と呼ばれるマドン監督は、これまでも次々とユニークな作戦を生み出し、話題を集めてきました。内野手5人制や外野手4人制、2死満塁からの敬遠など、セオリーに固執することなく、勝つために最善策を駆使することを信条としています。最優秀監督賞3回、2016年にカブスを世界一に導いた67歳の大ベテラン監督ですが、固定観念がなく、いわゆる「柔らか頭」の持ち主。選手だけでなく、メディアを含めても、コミュニケーションの達人として知られています。大谷によると、マドン監督とは、ほぼ毎日のように体調確認をはじめコミュニケーションを取っているそうで、そのあたりが人心掌握術にもたけるボスと言われる理由なのでしょう。

過去、レイズ時代に岩村明憲、松井秀喜、カブスではダルビッシュ有、川崎宗則らを率いた経験もあり、日本人の野球観も十分に理解しています。エンゼルスのマイナー監督時代には、1986年から巨人軍がアリゾナ教育リーグに参加し始めたことを機に、当時2軍監督だった須藤豊氏(野球評論家)と意気投合。日本人の勤勉さや基本に忠実な姿勢に感銘を受けたそうです。近年も、須藤氏が米国を訪問するたびに再会し、互いに「ベストフレンド」と呼び合うなど、30年以上にわたって親交が続いています。

そんな経歴を持ち、懐の深いマドン監督ですから、大谷の類いまれな才能を認め、本心を尊重することに、ためらいがなかったのでしょう。4日の試合後は、今後も「リアル二刀流」を継続する考えを明かしました。

「今夜、彼がやり遂げたことはかなり特別なこと。だが、シーズンが進めば、もっと見られるようになるかもしれない。翔平はみんなを楽しませてくれるからね」。

ファンを喜ばせるためだけでなく、マドン監督自身も、大谷のイキイキした姿を楽しみにしているような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)