MLBが今年のオールスターゲームについてジョージア州アトランタでの開催を取り消し、コロラド州デンバーに変更した。

これはジョージア州で投票行動を制限する内容の選挙関連法が成立したことを受けてのもの。同法では不在者投票の身分証明を厳格化したり、投票用紙回収箱が削減され、期日前投票についても投票のために列に並ぶ有権者への飲食物の配布禁止などが盛り込まれている。共和党主導によるこうした制限はマイノリティー(人種的少数派)を標的にしたと受け取られている。そのためMLBは現地2日、まずアトランタでの開催を取り消すと発表したのだ。

この判断には賛否の声があがることとなった。共和党員でテキサス州のグレッグ・アボット知事は5日、グローブライフ・フィールドで行われたブルージェイズ対レンジャーズ戦での始球式を辞退している。「メジャーリーグがジョージア州の物議を醸す新選挙法に関する『誤った政治的シナリオ』を採用したことを非難する」という手紙を送ったということだ。さらにMLBが開催する「いかなるイベントにも参加しない」とコメントしている。テキサス州も有権者制限法を検討している。

その後6日、MLBは開催地をデンバーのクアーズフィールドに変更すると発表した。ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーはロッキーズのディック・モンフォート・オーナーや選手会、現役・引退のアフリカ系選手で構成される「選手同盟」、スポンサー企業などと相談した上で決定したということである。

クアーズフィールド(2016年8月4日撮影)
クアーズフィールド(2016年8月4日撮影)

ただデンバーでの開催もすんなりとは受け入れられていない。コロラド州にも有権者ID法があり、期日前投票の日数も3日少ないことなどから反対の声もあるのだ。ただし同州の身分証明要件はそれほど厳しくなく、同州ではすべての有権者に不在者投票用紙を自動的に郵送しているため、コロラド州の投票率は全米で最も高い水準にあるという指摘もある。

さらに今回のオールスターゲームは野球界で最も著名な黒人レジェンドの一人であり、1月に亡くなったハンク・アーロン氏を称える試合となる。アトランタはアフリカ系の住民が50パーセントを超えているのに対し、デンバーは9.2パーセントにすぎない。開催地変更によってジョージア州が受ける損失は1億ドル以上になるという見積もりも出ており、アフリカ系住民も打撃を受けるのはいかがなものかという声もある。

アメリカが抱える非常に難しい問題が今回移転騒動でまた新たにあらわになった形だ。