MLBと選手会の労使協定が失効する12月1日(日本時間2日)まであと4日ほどとなり、米野球界がロックアウト(オーナー側による施設封鎖)に向けての準備を進めていると、「ジ・アスレチック」が伝えている。ロックアウトとなれば、トレード、FA選手獲得などすべて行えず、ポスティングシステムで交渉期間に入っている広島鈴木誠也外野手(27)にも、影響が出る(30日間の交渉期間はロックアウトと同時に中断し、ロックアウト解除後に残り日数で再開)。

そもそも、なぜこんな事態になっているのか。新労使協定締結への争点はいくつもある(後述)が、年俸総額に応じて発生する課徴金(ぜいたく税)の収益の分配方法変更や、年俸調停廃止などで対立。年俸の抑制につながるおそれがあり、選手会側は猛反発している。オーナー側が交渉を有利に進めるための手段としてのロックアウトなのだ。

MLBと選手会の闘争によって活動停止となれば、94年に選手会側が実施したストライキ以来となる。

大きな争点は具体的に次の4つとされている。

<1>若手選手の待遇アップ

選手はデビューから6年でFAとなるまで、最初の3年間はほぼ最低年俸に近い金額(今季は57万500ドル)、4年目からの3年間は年俸調停期間となり、この時期に全盛期を迎えていたとしても市場で得られるような額の年俸はもらえない。選手会はその改善を求め、経営者側はその点を譲歩する場合は見返りを求めることになる。

<2>タンキング防止策

現在のMLBのドラフトは完全ウエーバー方式で行われており、前年の最下位チームから順に指名権が与えられるのがベースとなっている。そのため資金力のないチームの中には、「タンキング」といって戦力補強にほとんど資金を投入せず、翌年のドラフト上位指名権狙いと思われても仕方がない動きをするケースがあり問題視されている。選手会にとっては、タンキングをするチームをなくすことが選手の収入アップにつながるため、何としても改善させたい課題であり、ドラフト方式の変更も関連した議題として挙がっている。また球団総年俸のぜいたく税ラインの引き上げ、総年俸の最低ラインの設定も議題に挙がっている。

<3>ポストシーズンの拡大

現在のポストシーズンは、各リーグ5球団ずつ計10球団が進出するシステムになっているが、新労使協定では進出チーム増がほぼ確実となっている。経営側は、大きな収益につながるポストシーズンの試合が増えることを歓迎。しかし選手会側は、枠が拡大し進出がラクになると、球団がそこまで必死に戦力補強をする必要がなくなり、補強に資金を使わなくなるのではないかとの懸念を持ち、何チーム増やすかに関して両者が対立する可能性がある。

<4>オンフィールドルールの改正

マンフレッド・コミッショナーは現在、マイナーリーグや提携の独立リーグで、さまざまな新ルールの実験を行っており、これをメジャーに導入するかどうかも新労使協定の交渉の場の議題。実験されているルールとしては、シフトの制限、投球モーションの時間制限、各ベースの大きさの変更、マウンドとホームベースの距離の拡張などだが、選手にとってはパフォーマンスに直結する変更も多いため導入に慎重になっている部分もある。