大リーグの公式球は「飛ぶ」「飛ばない」の歴史の波があります。草創期から20世紀初頭までは投手に支配された時代。ボール管理はルーズで、新球は泥などで汚し、スパイクの歯で傷つけることも当たり前。茶褐色の球は見えづらく、傷だらけの球は柔らかくなって不規則に変化しました。
潮目が変わったのは1920年です。死球により、試合中では最初で最後の死亡事故が起きました。以降は汚れがあると、すぐに真っ白な新球と交換されるようになりました。糸もきつく巻くように改良され、反発力もアップ。また同年はベーブ・ルースがヤンキースに移籍し、投打二刀流から野手に専念。前年に自身が打ち立てたシーズン記録をさらに25本も上回る54本塁打を放ち、1発の魅力にファンも熱狂したことで、「飛ぶボールの時代」が一気に到来しました。
意図的な「操作」をうわさされたのは、90年代後半のボールです。98年にマグワイア(カージナルス)とソーサ(カブス)の間で、ともに60発超という世紀のホームラン競争が繰り広げられました。これは長期ストライキにより95年に深刻なファン離れがあり、人気回復のためにMLB側がひそかにボールの仕様を変えたといわれます。「新ホームラン時代」の到来により、01年にはボンズ(ジャイアンツ)がシーズン記録を73本塁打まで伸ばしました。さらに「フライボール革命」により、19年には公式戦で史上最多6776本もの1発が飛び交いました。
打高投低が顕著になったことで、大リーグは昨年、ボールの新仕様を発表。コア部分を軽くするなどして反発係数を下げました。19年には1試合平均2・79本だった本塁打は、旧仕様球が混在した昨季はまだ同2・45本でしたが、今季は2・09本まで減少。投打のバランスを図ろうとする努力がうかがえます。【大リーグ研究家・福島良一】



