昨秋、故郷福島に発足したプロ野球チームを追える喜びを感じながら、私は戦々恐々としていた。「岩村明憲」が福島の監督になるかもしれない-。

 3年目の駆け出し記者にとって、荷が重い仕事だった。陰で叱咤(しった)激励してくれたのが11歳上の会社の先輩、今井貴久さんだった。今井さんは、かつて引退後のプロ野球選手を追う連載を担当し、その中で取材して以来、福島ホープスの小野剛GMと親交があった。

 「今、どうなってる」「書けるか」。事あるごとに電話越しにケツをたたいてくれた。だが、12月11日、信じられない電話が上司からかかってきた。「高場、落ち着いて聞け。昨日今井が亡くなった」。急性心筋梗塞で倒れ、43歳の若さで今井さんはこの世を去った。11月末、岩村監督の就任直後「ここで気抜くなよ」と言われたのが最後の会話だった。

 つい最近、真田裕貴投手兼任コーチが会話の中で「いやぁ、今井さんにはお世話になって」と切り出した。「福島に来ようか迷っている時に『行けよ』って言ってもらったんですよ」。今井さんは知らないところで福島のために動いていた。

 一緒にお酒を飲んだことも、まともに顔を合わせて話したことも無かったが、自分は勝手に最後の弟子だと思っている。今井さんにいい報告をするためにも、福島ホープスの最初の1年をきっちり追っていきたい。【高場泉穂】