来る人を拒む立場でもなければ、去る人を追うつもりもない。ただ、今オフ、広島黒田博樹(40)、ソフトバンク松坂大輔(34)、オリックス中島裕之らが米国から日本へ戻る決意を固めたことには、少なからず「時代の変遷」を感じた。そこが、ポイントだった。

 彼らが残した実績も、抱える事情も、それぞれに異なる。かつてドジャース野茂、ヤンキース伊良部らの先駆者がメジャーへ挑戦した当時は、「米国に骨を埋める」といった感覚が、本人だけでなく、見守る周囲にも確かに存在していた。だが、今は違う。日米間の「去就」が頻繁になってきたことを、あらためて考え直す機会になった。

 元来、メジャーで「通用するか、否か」の議論を耳にするたびに、常に疑念を抱いてきた。日本の一般企業にしても、大学卒業後、専攻を問わず、入社してくる新入社員に対し、その程度の「ものさし」で計ることはしない。たとえ「通用しない」としても、その後に配属が変われば、また違う能力を発揮するケースもある。少なくとも、日本のトッププロとして結果を残し、米球界に挑んだ選手に対して、「通用」の言葉は、失礼極まりない。

 適応、順応できるか、または力を発揮できるか-。

 今回、日本のプロ球界に復帰した彼らは、実績も立場もそれぞれに異なる。だからこそ、求められる役割も違う。

 若手への手本となる黒田、ローテの柱として見込まれる松坂、攻守の要と期待される中島…。

 彼らが異国で感じ、心身ともに培ったことが、いつしか自然と「還元」されるようになれば、日本球界もより成熟するに違いない。【四竈衛】

※「野球の国から 2015」<シリーズ11>「THE NEWCOMER メジャー帰り編」取材メモ