取材を受けてくれた人が松坂デビュー戦について熱く語ってくれたことに心底感謝している。中でも、この連載の骨格を決めたのは球審を務めた平林岳さん(49)だ。現在は現場を離れ審判技術委員を務めている。この肩書を知ったとき、私自身も感触は得ていた。なぜなら現役の審判員ではないから、ある程度、話してもらえるのではないかと。

 その通りだった。平林さんは「いいタイミングだったかもしれません。現役だったら(取材に)ストップがかかっていたかもしれないし。僕自身、話したことはない。初めてです」と言った。幸運だったと思う。

 それだけではない。おもしろい裏話があった。1年目の西武キャンプで松坂のブルペンを観たことは連載に書いている。初球を見てキャンプと本番で別人で驚いたシーンだ。実は偶然にも今春はソフトバンクのキャンプを訪問している。やはり縁がある。「あんまりよくなかったんです。前と一緒なのかな。みんなに見せる必要ないし。公式戦で見せるのかなと僕は期待しています。現場でやっていたら、またデビュー戦やりたかったです」。やはり熱い。松坂だけでなく、今回の連載では周囲の人々にもドラマがあると感じた。それが少しでも読者に伝われば幸いである。【矢後洋一】