何げない会話がきっかけだった。3月のあるオープン戦後。試合中にストップウオッチを手にしていた私と古川記者を見ていたデスクが言った。「野球と数字の関係って、面白いものがいろいろあるんじゃないかと思うんだ」。打率や防御率などだれでも知っているもののほか、野球の魅力を高める数字があるのではないか。野球と数字-。興味を持った古川記者と、帰宅後すぐに計測したいものを電話で話し合った。

 考え出すと、ばかばかしいものが浮かんできた。でも実行前に無理とは決めつけず、思いついたものを列挙した。とりあえずはかってみたものの、うまくはかれないものもあった。捕手の二塁送球、1試合でボールは何個交換されるか、美人売り子は1日にビールを何杯売るのか、打球音の音階の高さは…今回は見送りになった中にも、興味深い項目があった。

 「三塁コーチ、サインを出す際に何カ所タッチするのか」を計測後、巨人の三塁コーチを務める勝呂内野守備走塁コーチは「野球って、見るところがいっぱいあるんですよね」と言った。「これって試合に関係あるの?」ということが、意外にも新たな発見につながった。頭を柔らかくし、さまざまな角度から見てみると、野球の面白さはさらに増すんだと実感できた。【浜本卓也】