ソフトバンクが首位奪還に成功した。日本ハムとの首位攻防第1ラウンド。同点の9回無死一、三塁、代打の吉村裕基外野手(31)が適時打を放ち、サヨナラ勝利を飾った。守備のミス、1点リードの7回に同点とされる暗雲もすべて吹き飛ばす劇的打。交流戦最高勝率の強さをパ相手にも見せつけた。

 吉村が、もつれた首位攻防戦にケリをつけた。3-3の同点で迎えた9回裏、無死一、三塁のチャンスに代打で登場した。日本ハムも左腕石井から守護神・増井にスイッチ。吉村が言う。「投手が代わったので、左(の代打)に代わるかなと思ったが、そのまま行けと言われたので意気に感じました」。

 ベンチの期待に一振りで応えた。初球151キロ直球を中堅右へライナーではじき返した。ナインから手荒い祝福を受けた吉村は、工藤監督から「初球から積極的にスイングしてくれた」と笑顔で出迎えられた。プロ13年目で通算4本目、ソフトバンクでは初となるサヨナラ打で、日本ハムから首位の座を奪った。

 この試合まで38試合で打率1割7分6厘、2本塁打、7打点と不振にあえいでいた。交流戦の最終戦となった14日、31歳の誕生日を迎えた。ファンの子どもたちからもらった手紙に目を通し「応援してもらっている。1軍がプロ野球。結果が出ていない中1軍にいられて甘んじているんじゃないか」と伏し目がちになっていた自分に気合を入れ直した。交流戦後2日間の休日はあえてバットを振らず心身を休ませ、この日から結果にこだわり1軍にしがみつこうと再スタートした。

 福岡・古賀市出身で、今年も博多のファンにマナーアップを呼びかけた。昨年は飲酒運転の撲滅を願ったが、今年は自転車のマナーアップ。お立ち台で「自転車での音楽を聴きながらはあぶない。ライトをしっかりつけて走りましょう」。移籍し福岡に戻ったが、自転車のマナーの悪さが目に付いていた。「ライトつけてない子どもとかいて危ない。僕も車から言ってはいるんですけどね」。バットで、お立ち台で吉村が今年も福岡への熱い思いを表現した。【石橋隆雄】