うそじゃろ!? 総力戦で延長12回引き分けにたどり着いた広島だったが、幻の本塁打があった。延長12回に田中広輔内野手(26)が放った打球はフェンスを越えたようにも見えたが、判定はインプレーの三塁打。後続も断たれて得点を奪えなかった。ただナインは気迫を出して野手が投手を、投手が野手を助けた。緒方孝市監督(46)は「意味のあるものにする」と執念ドローを生かす戦いを誓った。

 快音を残して田中の打球はバックスクリーン左へと飛んだ。延長12回1死走者なし。田中は阪神安藤の143キロを捉えた。打球はフェンスオーバーしてグラウンドに跳ね返ったように見えた。だが判定はインプレーで三塁打。ベンチから緒方監督が飛び出して抗議し、審判団はビデオ判定に入った。だが検証の結果も、判定は覆らなかった。

 審判団はバックスクリーン側からの映像を3度見たというが、その他の角度の映像は準備されていなかった。「ラバーとフェンスの間に当たったと3人とも一致した」と東責任審判は説明。映像では通行者保護のためにフェンスから直角に張られている甲子園特有のワイヤは確認できず存在の認識もなかったという。

 緒方監督 入ってなかった? でもビデオ判定もやっているからね。

 総力戦で延長12回引き分けに持ち込んだだけに、何とも不運な幻の本塁打。だが指揮官は執着は見せなかった。打った田中も「何もないですよ。僕は打って走っていたし、見えていません」。試合終了直後の時点ではあるが、球団としても何らかのアクションを起こすつもりもないという。

 気持ちを出して戦った結果だ。先発戸田が5回に降板して以降、中継ぎ陣が奮闘した。3番手一岡は2死満塁を招くもマートンを空振り三振に仕留めてほえた。4番手今村は2イニングを無失点。そして大瀬良はおきて破りの3イニングを直訴していた。最後は休日予定だった中崎が、今季60試合目の登板を無失点で締めた。

 攻撃陣も失敗こそしたものの8回には新井がバント。2回に堂林がセーフティーバントでヘッドスライディングして安打をもぎ取るなど気迫が出た。8安打に終わり、59年に記録した21戦連続の1桁安打の球団最長記録に並んだが、投手と野手が支え合っていた。「引き分けは負けに等しい。でも明日(13日)勝つことで意味のあるものに変わる」と指揮官は顔を上げた。首位と3・5ゲーム差。倍のいいことが起こるはずだ。【池本泰尚】