何が起きたんだ? 実際、そんな現場に立ち会った。5月4日、マツダスタジアムでの広島巨人6回戦。同点の9回裏1死満塁。広島小窪の本塁フェアゾーン付近への飛球を村田が捕り損ね、落ちたボールを一塁手フランシスコが拾って本塁ベースを踏み、三塁走者を封殺。2死満塁となるはずだった。数秒後、三塁走者の生還が認められ「サヨナラ負け」を告げられた。

 どのルールが適用されての結果なのか、瞬時に理解できなかった。本塁でフォースアウトじゃないのか。取材前、三塁ベンチ裏通路で考え込んでしまった。二塁と三塁の塁審が「インフィールドフライ」を宣告していたのが理由だった。

 野球規則2・40によると、インフィールドフライは「無死または1死で、走者が一、二塁、もしくは満塁での打者のフェアの飛球(ライナーとバント飛球を除く)で、内野手が普通の守備行為をすれば捕球できるもの」を指す。宣告されれば、打球がファウルの時を除いて打者はアウトになる。この試合で三塁走者をアウトにするには、タッチプレーが必要になっていた。よって、本塁生還が認められていた。

 このプレーの話をすると、NPBの井野規則委員は「ルールって、実は1つの信念に基づいて判断すれば間違えないんですよ」と教えてくれた。「フェアプレーであるかどうか、です。ルールの判断に迷ったら、その原理原則に戻ってみるといいですよ」。インフィールドフライは、故意による併殺を防ぐ目的があるという。1つ1つの実例を基にしたルール講座を聞いていると、確かにフェアプレーの精神が根底にあった。シーズン終盤、そしてポストシーズンを前に、ルールを深く学ぶいい機会を得た。【浜本卓也】