小久保監督は現在、「人生でいちばん大切な三つのことば」という本を読んでいる。奈良・吉野の大峰山で、往復48キロの山道を1日16時間かけて1000日間歩き続ける「大峰千日回峰行」を成し遂げた、仙台市・慈眼寺の塩沼亮潤住職の著書。同住職は9日間飲まず、食べず、寝ず、横にならずという「四無行」も行い、大阿闍梨(あじゃり)の称号を得ている。

 「ご縁があって、住職からはいろいろなお話をして頂いている。自分の誕生日に(本を)頂いて、読んでます」。小久保監督は現役時代から、いずれ指導者になるときのために、勉強の一環として本を読んできたという。「自分自身が(指導者に)なったときに、何を一番強く選手たちに伝えることが出来るかな、というのが原点なので」と明かす。

 選手時代もチームリーダーとして後輩たちを引っ張ってきた。その中で本だけでなく、球界以外の人たちとの交わりから多くのことを学んだ。塩沼住職もその1人。代表監督という立場になり、自分自身が得たものを選手へ還元したい思いが強くなった。「彼らにもいずれ、ユニホームを脱ぐ時期がくるじゃないですか? その時、自分の哲学的な、道として残るような話が、脳の片隅にでも残ってくれたらええな、という思いで話をするんですよ」。

 初代王者を目指すプレミア12。戦いの行方とともに、小久保監督の言葉にも注目したい。【佐竹実】