侍ジャパンが5発締めで3位を死守した。メキシコとの3位決定戦は山田哲人内野手(23)の2打席連発などで11点を奪い、7回コールド勝ち。小久保裕紀監督(44)が成長を求めてきた中田翔内野手(26)も3号2ランを放つ活躍をみせた。初代王者の目標を達成出来なかった悔しさを胸に、雪辱の舞台となる17年WBCに臨む。

 手にしたいメダルの色は違った。試合後、選手サロンで行われた侍ジャパン解団式。小久保監督は胸にかかった銅メダルを揺らしながら、裏方も含めた全メンバーに力強く語りかけた。

 小久保監督 このチームは1敗しかしていない。その1敗が、シーズン中にはない、重たい1敗だったと思う。俺の野球人生で一番重い1敗。この経験を俺は糧にしないといけない。みんなも財産にしてほしい。WBCでリベンジしよう。

 悔しさを押し殺して伝えた言葉には、雪辱への手応えがにじんだ。2回、中田が左翼席へ2ランをたたき込むと、珍しく白い歯がこぼれた。大会直前の10月下旬。これまで4番を託してきた男に苦言を呈した。「斜に構えたかっこよさがかっこいい男じゃない。実直にまっすぐ、人がいなくても剣を振っていた男が侍。もったいない。翔にとって代表は自分を変えられるチャンスなんですよ」。凡打で走らず、結果が出ないと感情をあらわにする姿。手本となれる素質があると認めるからこそ変わってほしかった。6番起用し、絶好調の1次ラウンド中も「打てなくなった時にどう振る舞うか」と見守り続けた。

 思いは伝わった。中田は準々決勝プエルトリコ戦から無安打が続き、韓国戦9回の中前打が10打席ぶりの安打。勝負どころで結果が出なくても常に一塁を駆け抜けた。「負けられない気持ちを前面に出せた。誰が悪いというわけでなく、ああいう悔しい思いはしたくない。もっともっと強くなってまた集まりたい」。この20日間での成長を感じさせる姿があった。

 次の国際大会は17年の第4回WBC。今大会は出場皆無だった現役メジャーが大挙参戦する、より厳しい戦いが待ち受ける。小久保監督は闘志を胸に秘め、静かに言った。「(WBCへの)ビジョンはありますが来年、今回招集した選手たちが活躍してくれることが一番です」。侍ジャパンが喫した痛恨の1敗。信じる選手たちと挑むリベンジの舞台は、1年4カ月後にやってくる。【佐竹実】