プレーバック日刊スポーツ! 過去の5月14日付紙面を振り返ります。1993年の野球面はロッテ小宮山の開幕6連続完投勝利でした。

◇ ◇ ◇

<近鉄2-7ロッテ>◇1993年5月13日◇日生

 最終回は、3者連続三振に切って取り、記録達成に花を添えた。プロ野球史上初の開幕から6連続完投勝利。「きょうは、これまで6試合で一番疲れた。肉体的にも、精神的にもね」。記録は意識しないようにしていたという。「でも、やっぱりね」と本音が口をついた。

 これまで通り、「先取点をやらない。走者をためない」の鉄則を守って投げた。2回。無死からレイノルズに左翼フェンス直撃の二塁打を放たれ、死球もあって1死二、三塁のピンチを迎えるが光山、吉田剛を変化球で、落ち着いて料理。大量リードに守られた終盤の失点も1点ずつに抑えた。

 昨季は8勝15敗。8連敗もあった。この変身ぶりの秘密のひとつに「聞く耳」を持つようになったことがある。今季の快勝劇のきっかけとなる3月13日の対阪神オープン戦初先発の直前だ。坂巻スコアラーのアドバイスを実行したのだ。「外角の直球がシュート回転で、真ん中に寄るところを痛打されるケースが昨年あった。今年はまっすぐで内角を突いてみてはどうか」。

 昨年までなら、プライドが邪魔をして、突っぱねていたかもしれない。しかし、今年は違った。この日も、カウントを取ったのは内角の直球。昨季0勝3敗、対戦防御率6・50と苦手にした近鉄打者を、何度かのけぞらせた。

昨年、屈辱の8連敗も経験した。「8連勝しても、お返しできない」と言う。連続完投勝利の「6」という数字も「11回(巨人斎藤)が、本当の日本記録です」と言った。ただ、「工藤(西武)の記録(開幕5連続完投)を抜いた?やったー」と、少しだけちゃめっけをみせた。

 早大の先輩でもある八木沢監督は「小宮山に尽きる。狭い球場だったけど、きちっとピッチングしてくれた。リズムがいいから、打線も援護できるんだ」と褒めちぎった。そして「もっともっと(記録を)伸ばしてもらいたいね」。本当のエースが誕生して今年のロッテは一本、筋が通った。 

 ◆データセンター 小宮山がオール完投で6連勝。過去、開幕から無傷で6連勝以上の投手はかなりいるが、シーズン初登板から6試合連続完投勝利というのは見当たらない。この日対戦した近鉄は、昨年まで通算2勝7敗、防御率4・76(一昨年から5連敗)。小宮山は苦手近鉄を倒して快記録をマークしたわけだ。なお、シーズン途中での記録には1989年(平元)斎藤(巨人)の11試合連続完投勝利がある。

※記録や表記は当時のもの