セイヤ、セイヤ、またセイヤ! 広島の背番号51の鈴木誠也外野手(21)が「日本生命セ・パ交流戦」のラストを3試合連続決勝弾で締めくくった。2戦連続サヨナラ弾を決めたオリックス戦で、3回戦は同点の8回先頭で左翼上段コンコース席に10号ソロをたたき込んだ。神がかりな活躍は、「赤イチロー」の異名そのまま。ニュースター誕生の広島は、6連勝で貯金11と首位固めに入った。

 3日連続の劇弾は、左翼上段コンコース席まで飛んだ。同点の8回先頭だ。カウント1-2から、高めに浮いたチェンジアップを捉えた。17日、18日はサヨナラ弾。この日は1イニング“早い”決勝ソロだ。そんな3戦連続の決勝弾にも鈴木は首をひねった。

 「分からないです。本当に。追い込まれていたので、長打はほぼ消している状態。追い込まれて本塁打狙うなんておかしい。フライを打たず、転がしていこうと思っていましたから」

 次打席には新井が控えている。つなぐ意識だけだった。だが、打球は3日間で一番飛んだ。「力はいらない。バットを45度の角度で入れると飛んでいくんです」。1月にソフトバンク内川との自主トレで教わった「究極の感覚」に近づいてきた。かつて1日で穴が開いていた打撃用の手袋は、発注ペースを落とすほど長持ちするようになった。この日もお立ち台の直後にスイングを確認するなど練習量は増えているのにもかかわらずだ。

 背番号51、同じ鈴木姓、高校時代は投手ながら打撃を評価されてのプロ入りと共通項の多い「赤イチロー」が、日本球界の主役に躍り出た。オリックス時代に6度、3試合連続本塁打を記録している本家イチローでも、V弾3連発は経験ない。前日18日の逆転サヨナラ3ランに緒方監督は「神がかっているよ。今どきの言葉で言うなら、神ってるよな」と身震いした勝負強さ。かつては活躍を帳消しにするようなボーンヘッドを繰り返し「一日一善くん」と指揮官に呼ばれた姿は、もうない。そのかわりに「誠也がでっかい仕事をしてくれた」と最敬礼を受けた。

 チームは今季最長の6連勝で貯金を11まで増やした。交流戦11勝6敗1分けはチームの過去最高勝率だ。40勝にもリーグ一番乗りと勢いは増すばかり。鈴木はチームを代表するように言う。「まだ6月。これからだと思います。本当の勝負は。またいつも通り、調子を落とさないようにやりたい」。25年ぶりの優勝へ向け「神ってる」鈴木が若さで引っ張る。【池本泰尚】

 ▼18日に史上10人目の2試合連続サヨナラ本塁打を達成した鈴木が、この日は8回に勝ち越しの10号。広島選手の3試合連続V打は09年9月29日~10月2日栗原以来で、3試合連続Vアーチは96年6月30日~7月3日江藤以来20年ぶり。過去2試合連続サヨナラ弾を記録した9人は前後の試合でVアーチを打っておらず、連続サヨナラ弾を含む3戦連続V弾は初めてだ。

<鈴木誠也(すずき・せいや)アラカルト>

 ◆生まれ 1994年(平6)8月18日、東京都荒川区。

 ◆球歴 二松学舎大付から12年ドラフト2位で広島入団。高校時代は投手で最速148キロ。打っては通算43本塁打。内野手として入団し、昨季は自己最多97試合出場。今季から外野手登録。

 ◆ソフトバンク内川塾 1月にソフトバンク内川らと自主トレ。つながりのあった小窪に頼み込んで実現。「ご飯を食べるのがもったいない」と夢中で練習した。

 ◆誠也シャワー ヒーローインタビュー中にパネル裏に隠れ、終わった瞬間に主役に水をかける役目。広島では「誠也シャワー」と呼ばれる。昨季は新井にはかけたが黒田にはかけきれず自分でかぶった。

 ◆アド街 11歳のときにテレビ東京系の人気番組「出没!アド街ック天国」に出演。東京都荒川区・町屋の回に、親子で練習に励む「リアル巨人の星」として紹介された。

 ◆アーチ勝率100% プロ通算16本塁打(15試合)をマークした試合は、すべて勝利を収めた。

 ◆サイズ 181センチ、87キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1700万円。