阪神は21日、オリックスから国内フリーエージェント(FA)宣言した糸井嘉男外野手(35)との契約が合意したと発表した。20日に移籍を決断した糸井が、オリックスと阪神球団に意思を伝えた。阪神は4年総額18億円とみられる好条件とともに金本知憲監督(48)の熱意をぶつけて恋人をふり向かせた。コメントを発表するのみの予定だった糸井だが、オリックスの選手会納会前に、タテジマで活躍する決意を口にした。

 「これでやるの?」。浴衣姿での会見に戸惑いを感じつつも、糸井が“虎の一員”として力強く決意表明した。激動の1日は夜になり、兵庫県内でオリックス選手会納会に出席。当初は取材に応じない考えだったが、思い直して肉声を発した。

 「活躍することをイメージして、もう動いている。(金本監督から)勝つために必要と言われたので、自分としてもやりがいを感じるし、さらにやらなアカンという気持ちになった。いろいろ考えたが、やっぱりチャレンジして、自分を奮い立たせてやってみようと言う気になった」

 阪神との11日の初交渉から10日が経過。悩んだ末に移籍を決め、スッキリしたような顔だった。リーグを初めてパからセに移すが、不安はない。脳裏には、甲子園で躍動する姿を既に浮かび上がらせている。

 前日20日の夜、オリックス長村裕之球団本部長に連絡して約束を取り付け、この日午前に大阪市内のホテルで会談。「阪神さんでプレーさせていただきます」との決断と、所属した4年間の感謝を伝えた。

 午後1時に阪神高野栄一球団本部長に電話で連絡。直接会うことを望んだ。それには及ばないと受け止められ、熱いコメントを阪神球団を通じて発表。11日の初交渉を思い起こすように、指揮官の情熱を移籍理由として強調した。

 「何より大きかったのは金本監督の熱意に心を打たれたこと」「また一緒に金本監督を男にできるよう、全力プレーでトップを目指していきます」

 さらには糸井自身も、変化を、成長を求めていた。「野球人として成長するために自分の中で変化というものが必要ではないかと考え、自分を奮いたたせ新しい環境でチャレンジする事により、さらに成長できるのではないかという強い思い」があったと明かした。

 オリックスの選手会納会では、今季までのチームメートから「(カメラの)フラッシュがまぶしいって! テレビに映るから、あっち行ってよ」といじられ、苦笑いする場面も。「納会に来るのを迷ったが、やっぱりお世話になったので、しっかり顔を見てあいさつしようと思った」と、けじめをつけた。明日23日のファン感謝イベント「Bs Fan-Festa」にも出席予定。オリックスファンに別れを告げ、新天地へ旅立つ。思いは1つ。金本監督の胴上げだ。

 ◆阪神の来季オーダー構想 金本監督はこれまで超攻撃型の2番糸井プランを明かしている。ポジションは中堅起用すれば右翼福留との共存が可能。福留の一塁併用という選択肢もある。一塁は捕手と両にらみの原口も候補。昨季22本塁打のゴメスが退団したが、契約合意に達している新助っ人エリック・キャンベル内野手(29=メッツ)が主砲として期待される。今季レギュラー格に成長した北條、高山の若手や、鳥谷の起用法も注目される。