巨人阿部慎之助内野手(38)は今季初のマルチ弾で通算383号とし、原辰徳を超えて球団歴代3位、1年目から17年連続2ケタ本塁打で長嶋茂雄に並び、同トップタイとした。

 交流戦最終戦の幕切れにヒーローになるはずだった阿部の姿はなかった。6回1死一塁、ロッテ松永の顔面付近の直球を避けようと倒れ込み、右膝付近を負傷。打席でもん絶し、そのまま途中交代を余儀なくされた。患部は腫れがあり、今後について鹿取GMは「明日の状況を見ないと分からない」と慎重だった。

 姿なきまま試合が終わったが、グラウンドに残した2度の快音は球団史に色濃く記録された。2回1死から、141キロ直球を右翼席上段に突き刺す9号ソロを放つと、4回にも右翼席へ10号ソロ。プロ通算383号とし、原を抜き球団3位となった。プロ入りから17年連続2ケタ本塁打は、長嶋と並ぶ球団トップタイだ。「うれしい。さらに上を目指して頑張ります」とコメントした。

 自身のプロ生活は「原監督」とともに歩んできたと言っても過言ではない。出場した2023試合のうち1507試合、1969安打のうち1469安打、383本塁打のうち289本塁打は原政権下で積み重ねた。14年オフに、捕手から一塁へコンバートされたときは「監督はオヤジの次にオレの捕手の姿を見てくれた人。お互いの意見が一致して決めた」とキャッチャーミットを置く一大決心をした。だから、打者としての今があると感謝している。

 「父の日」の2本塁打は、観戦に訪れた父東司さん(62)への思いも乗せた。試合前、父から「1打席目だけでもいいからバットを指2本分、短く持ってみたら」と言われた。阿部にとって“永遠のコーチ”からの助言に従い、グリップを余らせたスイングで放物線を描いてみせた。

 2000安打の大台到達が確実視されているプロ17年目。阿部が歩みを止めることはない。【為田聡史】

 巨人高橋監督(阿部について)「長年、長距離打者としてやってきた証し。まだまだ、数字を伸ばしてほしい」。

 ▼阿部が9、10号と2打席連発。通算本塁打が383本となり、巨人では原の382本を抜いて3位に進出した。これで阿部はプロ1年目の01年から17年連続2桁本塁打。2桁本塁打を17年以上続けたのは13人目で、巨人では王21年、長嶋17年に次いで3人目。王はプロ2年目からで、巨人でプロ入り17年連続2桁本塁打は長嶋に並ぶタイ記録。他球団を含めてもプロ1年目から17年以上連続は6人しかいない。また、阿部の1試合2本塁打以上は通算30度目。巨人でマルチ本塁打が30度以上は5人目でセ・リーグでは広島、巨人で30度の江藤に並ぶ10位タイ。