23日のソフトバンク戦で1軍復帰した大石の感謝は、一層大きかった。故障に悩まされ、不本意な投球が続いていた15年。森コーチが2軍の投手兼育成コーチに就任した。以来、二人三脚で指導を受けてきた。涙を隠せず「本当に信じられません…。慎二さんがコーチに来なかったら、自分はここまで投げられるようになっていない」と目頭を押さえた。

 支えられたのは、もちろん中継ぎ陣だけではない。28日の試合前練習後に帰京した菊池は、今日30日の先発に向け、西武第2で調整。「気持ちの整理ができていないので」と多くを語らず黙々と汗を流した。森コーチへの恩返しは、チームを勝たせる投球-。悲しみに耐え、その1点を見据えた。

 たとえ、どんなにつらいことがあっても、試合は続く。辻監督は「(森コーチへの)思いを持って、戦っていくしかない。我々は振り返れない。勝つためにやるしかない」と言葉を絞り出し、前を見据えた。今日30日は弔旗を掲げ、喪章をつけて戦う。それぞれが森コーチの志を胸に、勝利だけを目指す。【佐竹実】

 ◆森慎二(もり・しんじ)1974年(昭49)9月12日、山口県生まれ。岩国工から新日鉄光、新日鉄君津を経て96年ドラフト2位で西武入団。プロ1年目からリリーフで活躍。02年にはリーグ最多の71試合に登板し32ホールドをマーク。03年も26ホールドで2年連続最優秀中継ぎ投手。06年1月にポスティングシステムで大リーグのデビルレイズ(現レイズ)に移籍。同3月20日、マイナーリーグのフィリーズ戦に先発し、3球で右肩を脱臼。関節唇損傷で回復が遅れ、大リーグ未登板のまま07年6月に解雇。09年、BCリーグ・石川の選手兼コーチとなり10年から監督。15年に西武2軍投手コーチ就任。16年途中から1軍コーチに昇格した。189センチ、90キロ。右投げ右打ち。