ちょうど2カ月前の5月10日。今季1号を放った阪神戦は、勝利後も口を固く閉ざした。ロッカー室を出ると足早に帰路を進み、報道陣の問いかけには全て申し訳なさそうな会釈だけを返した。理由は「どうしても、しゃべれなかった」。開幕から思うような打撃ができず、打率は1割台に低迷。チーム、首脳陣、ファンに対する申し訳なさだけが募った。結果1つでは許されないという責任感が、自然と口数を減らしていた。

 行動で、結果で示すことを重んじる九州男児。佐賀で生まれ育ち、福岡の筑陽学園に進み甲子園を目指した。九州北部を襲った豪雨の被害に無関心ではいられなかった。「友達もいるし、大変だったみたいです。明日はヤクルトの選手にも手伝ってもらって活動をします」と立ち上がった。今日11日と12日、東京ドームでの試合前に募金活動を行う。「少しでも多くの方からのご協力をいただけたら」と故郷を思いやった。

 高橋監督は「ずっと軸になってほしい選手の1人。きっちり結果を出してくれるとチームもさらに動きだす」と後半戦も期待をかけた。頼れる選手会長が、バットで背中でチームを引っ張り上げる。【松本岳志】