全セの巨人田口麗斗投手(21)がギータ斬りで、その名を上げた。4回1死。171センチの小兵左腕がパ・リーグの現在3冠王にしてホームランダービー優勝の金看板を誇る柳田に対峙(たいじ)した。

 持ち球は直球、スライダー、チェンジアップ。普段は直球が6割弱、スライダーが4割を占め、実際は2球種に近い。「緊張がすごかった。(1イニング目の)1球目の直球のタレ具合はやばかった」という夢の球宴で、さらに直球色を強めた。幾人もの投手が涙をのんだマン振りに、果敢に直球を投げ込んだ。「スイングスピードがすごくて、音がマウンドまで聞こえそうだった。圧力を感じた」。8球目までスライダーを2球に抑え、140キロ前半の直球をぶつけても、2-2の平行カウントから動かない。

 意を決して最後は宝刀スライダーを選択した。通常は抜群の制球力を示すが、肩口から長距離砲の危険ゾーンに入った。フルスイングが柳田の背中にぶち当たる。「打たれたと思った」。だが勝負球は空を切り、捕手のミットに収まった。一息つくように帽子を取り、汗をぬぐった。直前の大谷との対戦も二刀流の強振の迫力を感じながらも左飛で抑えた。「力勝負とは言えないけど、しっかり抑えられて良かった」と、かみしめた。

 リーグトップの防御率、リーグ2位の8勝と実績をひっさげて、監督推薦で初出場した。練習前、巨人の選出メンバーとの記念写真では菅野にうながされ、真ん中にいざなわれ、おどけた。ベンチに入れば、一流選手の振る舞いを見て、感じた。「アウトになっても、さぁ次という前向きな姿勢がすごい。それで、いざグラウンドに行くと冷静。スターの人と野球ができてよかった」。初々しい感情を抱えながら2回を完全投球で締めた。次世代のスター候補であることは、夢の球宴で証明された。【広重竜太郎】