プロ5年目、今年の夏が野球人生で最高に熱い。巨人菅野智之投手(27)が、自身最速ペースで、両リーグ最速の10勝に到達した。3位DeNAを8回98球、3安打10奪三振と圧倒。防御率でも同僚の田口を抜き、リーグ1位に躍り出た。中4日、中5日、球宴を挟み中10日の変則日程で21イニング連続無失点の自身3連勝。誰もが苦しい状況でこそ、頼れるエースが輝く。

 この勝利のために11日間を費やしてきた。8回2死走者なし。菅野が98球目の150キロ直球で倉本から空振り三振を奪い、3連続三振を完成させた。完膚なきまでに反撃への意欲を奪い、9回を救援に託した。右手中指のマメによる交代とみられ、巨人では96年斎藤雅樹以来のシーズン4完封目は逃した。それでも、区切りの2桁に「素直にうれしいです。去年は悔しいシーズン。後ろめたさもあったので」と充実感をにじませた。

 調子不問で勝ちきる準備があった。初回の1死満塁を無失点で切り抜けると、8回の降板まで二塁を踏ませなかった。「ブルペンから調子がよくなくて不安でしたが、(小林)誠司が導いてくれました」。序盤は直球系が大半。「前回の対戦で梶谷さんとロペスに曲がり球をホームランされた」と勝負どころまで代名詞のスライダーを温存。中盤以降で解禁する、絶妙なマネジメントで圧倒した。

 プロ5年目、登板までの準備の質が飛躍的に向上している。木村投手兼トレーニングコーチには「菅野は投げる日だけ伝えれば、自分でしっかり調整してくれる」と信頼を置かれる。登板日から逆算して練習量を調整。中4、中5日ではブルペンの代わりに遠投を行う。休養と負荷のバランスの責任は全て自分で負う。「間が詰まった時は、量を落としても質を落とさないように。つらい時はありますが、楽をしようとは全く思わない。自分のために」と明確な目標で完遂する。

 少年時代の自分は「夏休みの宿題、苦手でした。割とサボっていた方です」と記憶しているが、野球に関しては妥協ができない。「いろんなキャリアを積ませてもらって、それを今、ようやく生かせている」。チームが苦境の時こそ、鍛え上げた右腕で力強く引っ張り上げる。【松本岳志】

 ▼菅野が両リーグのトップで10勝に到達。菅野の2桁勝利は通算4度目だが、これまで最も早い10勝到達は13年の8月11日、チーム100試合目。7月中に10勝したのは自身初めてだ。巨人投手の両リーグ10勝一番乗りは07年高橋尚以来7人、8度目で、過去7度のうち52年別所、89、90年斎藤雅、99年上原が最多勝を獲得。過去に防御率のタイトルを2度、最多奪三振を1度獲得している菅野だが、最多勝はまだなし。このまま逃げ切って自身初の最多勝を獲得できるか。