虎が再び窮地に立たされた。ヤクルト14回戦(神宮)で敗れ、連勝ならず。首位広島とのゲーム差は、また今季ワーストタイの9に広がった。絶好の反撃機だった6回無死一、二塁で中谷将大外野手(24)が痛恨の送りバント失敗。指揮官も危機感をあらわにした。一方で、セットアッパーとして活躍してきたマルコス・マテオ投手(33)が腰の張りを訴えて戦線離脱。糸井、糸原を負傷で欠く中、また故障者が出てしまった。

 一塁側のスタンドはヤクルトの連敗脱出に沸いていた。その歓声を背に敗軍は重い足取りで帰りのバスに向かう。燕に7月初白星をプレゼントしたのは、阪神だった。本来ならば献上しなくてもいい、もったいない敗戦だ。金本監督が苦い表情で振り返った。

 「あれで流れが大きく変わりましたね」

 2点を追う6回の攻撃だ。西岡の内野安打と上本の四球で無死一、二塁。3番中谷にバントの指示が出た。初球を空振り、2球目は見逃し。3球目はファウルとなり、バント失敗の三振になった。福留、ロジャースも連続三振。同点のチャンスは一気に消滅した。指揮官はベンチに戻った中谷に対し、怒声を発したように見えた。初回もフルカウントでボール球を空振り三振。スタートを切った西岡も二塁で憤死。痛恨の併殺を許した。

 「(初回は)ワンバンですよ。そこをどう考えるか。状況判断…。バントなんか、状況判断もクソもない。ストライクを2球見逃して。バントをやるだけだから。やった上で失敗なら、分かるけどね。そういうところが足りないところだから。もう何試合、出てる? 経験はもう積んでいるはず」

 金本監督は言葉に怒りをにじませた。打撃面の成長は若手で最も認めている。打席での状況判断は開幕からの課題だ。克服できない姿にいら立った。中谷は「言い訳できないです」と言葉を残し、厳しい表情で球場を後にした。

 前夜は4本のアーチが飛び出す快勝だった。この流れが続かないのが、現状を物語っている。イケイケだけでは、連勝できない。この日のような劣勢の展開では、しぶとく1点を取っていく必要がある。だから、指揮官は嘆いた。広島とのゲーム差は今季ワーストタイとなる「9」。追い上げムードが高まらない。【田口真一郎】