ソフトバンクが3連勝で両リーグ通じてクライマックスシリーズ一番乗りを決め、優勝マジックを14に減らした。先発千賀滉大投手(24)が7回2/3を3安打1失点で12勝目。規定投球回に3イニング足りないものの防御率を2・29として、西武菊池を抜き「隠れ1位」となった。規定の13勝にあと1勝足りないが、勝率8割も「隠れ1位」の状態。投手部門2冠の可能性も出てきた。チームは貯金を今季最多の41とした。

 ムキにならない、大人の千賀がマウンドにいた。1点リードの6回、連打と四球で無死満塁。4番ウィーラーを迎えたピンチにも、冷静だった。マウンドに駆け寄った甲斐に千賀は「1点は仕方ない」と伝えた。普段なら1点もやらないと気持ちが高まる場面で「今日のフォークなら無理」と切り替えた。150キロ直球でウィーラーを三ゴロ併殺に打ち取る。その間1点は失ったが後続を断ち、その裏の勝ち越しにつなげた。

 お化けフォークのキレがイマイチでも楽天打線を料理した。前回8月19日の対戦で1球も投げなかったカーブも使い、戸惑わせた。「正直、危ないところもあったが、拓也(甲斐)がよくリードしてくれて、フォークに偏らなくてよかった」と相棒に感謝した。

 3月のWBCが転機だった。「侍が大きかった。こいつはOK、こいつはダメ。今季は1歩引いて見ているところがいい」と自分を評価する。どの打者からアウトを取ることを優先すればいいか。落ち着いて考えるようになり、要所を締められるようになった。

 この日の勝利で昨年に並ぶ12勝となった。現在勝率8割で、規定の13勝を挙げれば最高勝率のタイトルが見えてくる。防御率2・29も、規定回に3イニング足りないものの「隠れ1位」だ。「(菊池とは)投げているイニングが違うので向こうが上」と話したが、2冠の可能性もある。

 この日のウイニングボールは観戦に来ていた孫オーナーに手渡した。「僕はいらないし、オーナーはあまり来られないので。家にも何にもないんですよ」。自宅に飾られているのはテレビ番組で現役選手のアンケートで変化球1位に輝いたトロフィーだけだ。

 チームは3連勝で優勝マジックを14に減らした。まずは個人タイトルより優勝。千賀は先発の柱として初めて浴びる美酒を楽しみに投げ続ける。【石橋隆雄】