巨人の「ドラマチックしんちゃん」が、延長サヨナラの劇的勝利に導いた。6-8の9回2死一塁。2年目の宇佐見慎吾捕手(24)が、中日田島のフォークを思いきりしゃくり上げた。オレンジ一色の右翼席に落とすと、26年ぶりの巨人戦開催を待ちわびた松本のファンも大熱狂。この一撃で延長戦に突入し、同11回の寺内のサヨナラ3ランを呼び込んだ。宇佐見は「(体が)うまく回れました。何とか次につなげたい気持ちでした」とほおを緩めた。

 ドラマチックが止まらない。8月18日DeNA戦の延長10回に放ったプロ1号はサヨナラ弾。2号はプロ初スタメンだった同25日の阪神戦だった。そして、3号同点2ランは起死回生の1発。今季5安打中3本が本塁打と勝負強さが光る。

 どんな球も強く打つ意識で鍛錬を積む。だからこそ“悪球”もフルスイングできる。高校時代のゴルフの授業で、左打ちだと打球が曲がるため右に変えた。だが、この日は地面スレスレに落ちる球を、左打席から“スーパーショット”。「もう1回同じ打ち方は、たぶん無理」と苦笑いする芸術打でチームを救った。

 劇的な一戦は名脇役が締めた。8-8の延長11回1死二、三塁。同じく途中出場の寺内が左翼席にプロ初のサヨナラアーチ。「まさかです。プロ野球生活で一番芯を食った本塁打でした」と声を弾ませた。

 負ければ3位DeNAと2・5差に広がる瀬戸際で踏みとどまった。シンデレラボーイの活躍で、11年連続CS進出への加速度がついた。【浜本卓也】