阪神が、連夜のサヨナラ負けで広島の前に屈した。3点をリードして試合を優位に進めたが、8回に暗転。福留孝介外野手(40)糸井嘉男外野手(36)の守備の乱れが響いてマルコス・マテオ投手(33)が同点に追いつかれ、延長11回から登板した7番手石崎剛投手(26)がサヨナラ打を浴びた。悲劇の連続に、金本知憲監督(49)は「ここは…なんていうのか…。そういう風が吹いている、向こうに」と話すのがやっとだった。 悲劇は一夜限りではなかった。会沢の打球は無情にも右翼糸井の頭上を越した。赤く染まったマツダスタジアムを大歓声が包む。最後は7番手の石崎が力尽きた。ナインは肩を落とし、三塁ベンチに引き揚げる。逆転優勝に望みをかけるはずが、まさかの2戦連続サヨナラ負け。「ここは本当に…、なんていうのか…。そういう風が吹いている、向こうに」。金本監督は顔を紅潮させていた。

 敵地マツダの「風」はとてつもなく厳しい逆風だ。8月1日の試合で、1点差の接戦を落とし、指揮官はこう話していた。「この球場の流れというか、どこのチームも勝てていない。流れが悪いというか、そういう雰囲気はある」。それを象徴したのは、この日の8回だ。3点リードで必勝リレーの1人であるマテオを投入。しかし3失点で同点に追いつかれた。福留が左翼への飛球を見失い、三塁打にした。名手糸井が痛烈な右前打を後逸し、同点走者の生還を許した。自軍に優位な状況でも、考えられないプレーが起きる。「強い風は止められない。どのチームも」。金本監督は思わずうなった。

 前夜は守護神ドリスがサヨナラ弾を浴び、この日はマテオがマウンド上で苦しんだ。広島に勝ちきれない。それでも指揮官はリリーフ陣を責めることはなかった。

 「今まで、うちはリリーフでもってきたチーム。そこが打たれたのなら、昨日と一緒。どうしようもない。仕方ないとしか言いようがない。今までこの位置にいれたのは、リリーフの貢献があったから。一番大きいところだったから」。大事な局面で、背信投球を見せたが、信頼は揺るぎない。

 圧倒的な強さを誇る広島に対し、互角の試合展開は見せてきた。あと1歩。あと1歩の差だ。これを乗り越えるチームが目指すところだ。「そこを目指さないと。どんな逆風が吹こうとも、自分たちが勝つ気持ちを持っていると思うし」。チームは3連敗で、広島の優勝マジックは「10」に減った。きょう7日は、せめて次につながる白星がほしい。【田口真一郎】