初のCSで阪神金本監督の采配がさえた。7回、DeNAの中軸との対決でマテオを投入した。シーズン中なら桑原の場面だ。「クリーンアップとか強力なところはバッターの右左もあるが、調子のいい方を先に出そうと。桑原が多少、調子が落ち気味だったので、あえてマテオを先にいった」。マテオはロペスを一飛に打ち取り、筒香と宮崎は連続三振。狙いは的中した。8回の桑原は1死一、二塁のピンチを招いたが、続投させた。「今年はああいうところできっちり抑えてくれて、2位になれた。そこは信じていた」。自身が編成したリリーフ陣が最高の働きを見せた。

 最も大きな決断はメッセンジャーの中3日起用だった。右足骨折から急ピッチで調整したが、万全で臨めるか不安はあった。本人との対話の中で思うところがあった。「できれば、トップで行きたい。全然、大丈夫だ」。CS初戦の先発を直訴するエースに心を動かされた。「中3日が気になっていたが、意気込み、俺がやるという魂。それを僕は買いたかった。本来なら明日(第2戦)が理想ですが、そういうメンタルを大事にしたかった」。右腕は指揮官の期待に応えた。

 この日の試合前、金本監督はナインの前でゲキを飛ばすことはなかった。「あえて集めなくても、みんなのモチベーション、戦いに向かう顔つきは何も言わなくてもいいな、というものを選手は出してくれていた。言わなくても、大丈夫」。ファイナル進出に大きく前進。「信」の一字でつかんだ白星だった。【田口真一郎】