ソフトバンクが、日本シリーズを制した。圧倒的な戦力が注目されるが、打撃、走塁、守備、すべてに「意識高い系」な伝統こそ、「常勝」の秘密といえる。この日の9回、遊ゴロに全力疾走するデスパイネが象徴的だった。

 例えば、ホークスの打者は空振り三振しても、捕手がこぼせば、必ず一塁へ全力疾走する。長らくリーダーを務めた小久保裕紀氏が、後輩に語っていた言葉がある。「このチームは打つこと、走ること、守ることを分けて考えられないといけない。何かがダメでも他に引きずってはいけない」。今、小久保氏を継いで主将となった内川も、移籍時に、この言葉をかけられた。鳥越内野守備走塁コーチも「全力疾走は当たり前のこと。2軍コーチ時代から徹底して周知してきた。それは今、徹底されている」と胸を張る。

 今春からは「捕手が少しでもこぼせば(走者が)次の塁を狙う」ことも徹底された。今季オープン戦のチーム盗塁数31にも表れた。これは12球団で、昨年の20盗塁から飛躍的に増えた。レギュラーシーズンの盗塁数こそ16年107→17年73と減ったが、1つ先の塁を狙う意識はポストシーズンまで貫かれた。村松外野守備走塁コーチは「数字ではない。選手の意識の問題。シーズン中にこの取り決めが1度緩んだことがあったが、鳥越コーチと2人で『走らんかい!』と引き締めた。走ることは相手にへのプレッシャーになる」と振り返った。

 ド派手な攻撃力と強力投手陣に隠れがちな部分もおろそかにしない。ソフトバンクが日本一になった理由の1つである。【浦田由紀夫】