闘将の言葉を胸に、東北を再び熱くする。楽天嶋基宏捕手(33)が6日、4日に亡くなった星野仙一氏への思いを語った。監督就任1年目の11年に東日本大震災が発生。選手会長として最初は星野氏と衝突することもあったが団結し、13年の日本一につながった。負けることが当たり前だったチームを闘う集団へと変えた指揮官に感謝し、今季の日本一奪還を目指す。

 まだ、受け止められなかった。嶋は「実感がないし、考えられないです。信じられない。球場に行ったら『嶋!』と呼ばれると思う」とつぶやいた。

 11年3月、東日本大震災が起きた。野球をしている場合ではないという選手に、就任1年目の星野監督は怒った。「最初は僕たちのことを理解してくれなかったと思った。今になって分かる。何十年とプロの世界で生きてきた星野さんは経験が違った。僕たちが一時的な感情で動いていたり、子どもだった」。プロ野球選手としてできることを気づかされた。

 少しずつ全員が変わっていった。チームには負けることに寛容な雰囲気があった。敗れてもクラブハウスには笑い声が響いた。しかし「星野監督が来られて意識は変わった。負けたゲーム後、帰りのバスで笑い声は一切なくなった。1つの勝ちに対する執念、情熱。特に若い選手が肌で感じた」と闘将の怒声が闘う集団へと導いていった。

 厳しさは愛情だった。捕手という役割上、よく怒られた。だからこそ「僕は絶対に星野さんを黙らせてやろう、納得させてやろうという思いがあった。それが優勝になった」と話す。選手を発奮させるための言葉のムチ。「その中に愛情があって、本気でそいつのことを思っていろんなことを言ってくれた。人間味というのは星野監督と出会って勉強させてもらった」と胸に響いた。

 忘れられない言葉がある。「13年、日本シリーズ第6戦に敗れた後に全員集めて『頼むから俺を男にしてくれ』と言われた」。崖っぷちで選手を頼りにしてくれたことがうれしかった。

 思い出は数え切れないほどある。「監督から教えていただいた『闘う姿勢』を忘れず、今年こそ東北を熱くします。そしていつか監督のような厳しさの中に愛情のある人間になりたい」。闘将の思いは東北で生き続けていく。【島根純】