西武から8年ぶりに古巣へ復帰した楽天渡辺直人内野手(37)が、死ぬ気の覚悟でプロ12年目に突入する。2日、沖縄・久米島で行われた1軍キャンプでは個別練習で1時間ほど打ち込み、その後も居残りで約15分間無心でバットを振った。今季、再び楽天でプレーできる喜びを胸に秘め、身を粉にする。

 クリムゾンレッドのアンダーシャツに再び袖を通した渡辺直は、喜びに打ち震えていた。「良い緊張感で、気が引き締まる思い。また楽天でプレーできるとは」。8年ぶりの復帰で当時のメンバーと様変わりしていたが、古巣は温かいままだった。失策すると笑いが起こり、17歳下のオコエとは野球談議に花を咲かせられる。「置かれている立場が前と違うので比べられないけど、当時から楽天は良いチームだと思っていた。来てみて、やっぱり良いチームだと思った」と笑みを浮かべた。

 この日のキャンプでは、個別練習で1時間ほど打撃マシンを相手に打ち込み、さらに居残りで打ち込んだ。「使いたいって思ってもらえる動きをしないといけないし、成績を出さないと」。手薄な二遊間のバックアップや、右の代打など複数の起用法がある中で、渡辺直は覚悟を決めていた。

 渡辺直 取ってもらったこの古巣で何かを残したいし、恩返しがしたい。その思いだけ。何ができるかとか、試合に出てどれくらいできるかとか、どういう数字を残すかとかはあまり興味がない。

 楽天を愛する男だからこそ、決めた覚悟だ。10年には自身のトレード会見で涙を流し、昨年末の復帰会見でも、目を赤くして言葉を紡いだ。「楽天に『取ってよかった』と思ってもらいたい。現役生活があと1年で終わってもいい。そういう覚悟でやっている」。この身が燃え尽きてもいい。己に流れる血潮を、クリムゾンレッドに再び染め上げ、完全燃焼してみせる。【高橋洋平】