ミスターが「監督」として帰ってきた。巨人の長嶋茂雄終身名誉監督(81)がジャイアンツ総監督としてベンチ入り。04年に脳梗塞で倒れて以降、初めての“指揮”でオーラを放ち、愛弟子松井らにパワーを与えた。かつてしのぎを削った野村克也総監督(82)率いるホークスに11-3で快勝。レジェンドの面々の中で、圧倒的な存在感は変わらなかった。

 ベンチにミスターが“太陽”として居続けた。3回裏、怒濤(どとう)の攻撃で5得点を挙げると立ちっぱなし。王、金田と言葉を交わしながら戦況を見守る。「ナイス!」と選手を鼓舞。足を負傷した大久保から「スピード&チャージを実践したからです!」と監督時代のスローガンをアピールされると「ヨッシャ!」と、たたえた。長嶋総監督の周りに笑顔が咲いた。

 「しばらくぶりにベンチに入って試合を見ながら、選手の近くで元気な姿を見て、やっぱり野球はチームだなと。気分が良かった」。最後の采配は03年のアテネ五輪予選。近年は始球式などで打席に立つことが多いが、この日の出場意欲には「今日はなかったです」と笑った。指揮官としての情熱がより、うずいた。

 盟友と愛弟子も「長嶋監督」に浸った。4番王は「今、巨人のOBで長嶋さんが一番、みんながその気になる」と一体感を感じた。松井も第1打席で火を噴く特大のファウル、第3打席でも大飛球を放ち、恩師を喜ばせた。「監督というより、長嶋さんがそこにいるだけでみんなが幸せになる」。すべてを表す言葉だ。

 ミスターも呼応した。「王さんは十何年間、ONあるいはNOという時代でやって、何とも言えない感じで良かった」。松井、高橋には「いい打球を打つ。(2人が指導する巨人の)ペナントが面白くなってきた」と高揚した。降水確率90%と開催が危ぶまれた。だが試合序盤すぎから終盤までやんだ。「9回を終えてまた降って、面白いなぁと」。長嶋監督はこの日も太陽にめでられていた。【広重竜太郎】(出場者の敬称略)