阪神新外国人のウィリン・ロサリオ内野手(29=韓国・ハンファ)が、突然の打撃不振に陥った。2月の沖縄・宜野座キャンプでは170メートル弾をカッ飛ばすなど大暴れしたが、オープン戦の本格化に伴い急降下。この日の中日戦(甲子園)も3打数無安打で、打率は1割1分1厘まで下がった。4番の不振に歩調を合わせるような貧打で、チームも6連敗。元阪神監督で日刊スポーツ評論家の真弓明信氏(64)が、浮上に向けて緊急提言を行った。【取材・構成=松井清員】

 ロサリオからパタリと快音が消えた。この日も3打数無安打で、ノーヒットは8打席連続。オープン戦打率は1割1分1厘まで下がった。「寒さもあったのでコンタクトできなかった。こんな寒さはなかなか(経験が)ない」。温暖なドミニカ共和国から来た大砲は、試合開始時に約8度だった寒さを理由の1つに挙げた。だが、真弓氏は急降下の要因について、技術的な点も指摘した。

 真弓氏 ポイントが近過ぎるね。キャンプ中はガンガン引っ張って大きい当たりを飛ばしていた。それが実戦が本格化して外へのスライダーを空振りしたり、内外高低で揺さぶられ始めると、手元まで引きつけて打とうとなる。ポイントが近くなる分、速い球が来て慌ててバットを出しても間に合わない。焦りも募るし、今日のようにボール球を振ることも目立ってくる。

 初回の第1打席は小笠原の外角高めの完全なボール球を空振りした後、甘めの真っすぐを仕留められず中飛に倒れた。4回の第2打席は外角高めボール球に飛びつくように打って遊ゴロ。7回の第3打席は初球、捉えるのは難しそうな外角低めのチェンジアップに強いスイングができず捕邪飛に終わった。

 真弓氏 キャンプであれだけ飛ばせていたのは、長距離砲として理想的な「後ろが小さく、前が大きい」打ち方で、バットを最短距離で出していたから。でも今のようにボールをつかまえたいと力むと、バットは遠回りする。それでもつかまえようとするから前が小さくなり、ポイントも近くなる。近いと引っ張るのは難しいし、逆方向にしか飛ばなくなる。

 好調時から落差の激しい急変。真弓氏は「打者は結構、ナイーブなもんだよ」と言う。どこで歯車が狂ったかは本人にしか分からないが、異変が起きていることは間違いない。ロサリオは「(寒さを)1度経験できてよかった。明日もプレーするよ」と前向きに言葉をつないだ。だがチームも4番の不調に合わせるような貧打でオープン戦6連敗。真弓氏はロサリオを象徴とし、打線全体に共通の課題があると指摘した。

 真弓氏 打線は全体的に調子が落ちている。大事なのは選手個々が、技術的にどこが悪いかを自分で把握しているか。分からず打ち続けても、長引くだけでもっと自信をなくす。ロサリオも小さくまとまった打撃でのヒットではなく、豪快に引っ張る本塁打を期待されて入団したはず。早く持ち味を思い出して欲しい。