パワーアップした虎の若武者が、ホーム開催初白星を呼び込んだ。阪神大山悠輔内野手(23)が中日2回戦(京セラドーム大阪)で4回に2号2ランを放った。貴重な追加点を挙げ、再びチームに貯金1をもたらした。今季の2本はどちらも右方向へのアーチ。グッと押し込めるように進化したスイングで、18年型猛虎打線を先導していく。

 振り抜いても、ギュッと握ったままだった。打球をギラリと見つめ、2、3歩駆けだしたところで大山はそっとバットを置いた。右翼席に吸い込まれるように描いた2号2ラン。最後までグッと右手で押し込めているからこそ、バットを離さない。

 「去年までは右方向にいい当たりをしてもフェンス手前でアウトになる打球が多かった。飛距離は伸びてるなと自分でも思います。(フェンスを)越える、越えないだと天と地の差。やっとウエートトレーニングの効果が出てきたかなと思う」。新人だった昨季に放った7本塁打は全てレフトへ引っ張ってのアーチ。開幕戦に続く2本目だが、いずれも右方向。18年版大山の自信が確信に変わった一打だった。

 ホーム開催初白星に導いた。1点リードの4回1死一塁。中日先発ジーの外角高めに浮いた134キロカットボールをたたいた。「強い打球を打つ事を考えて、コンパクトにスイングできた。最高の結果になった。自分自身打てないで、悩んでいるのもあったんですけど、開き直って気持ちでいきました」。試合前までは打率2割1分7厘。コンスタントに結果を出すことに苦戦していたが、好投を続けていた竜の助っ人右腕に値千金の1発を見舞った。

 失敗を恐れず、常に成功をイメージするように心掛けている。移動中の新幹線やバス、鍛え疲れた体をほぐす、癒やしの時間までも野球に夢中だ。「ゆっくりお風呂につかりながら、YouTubeで見たりします」。メジャー屈指のスラッガーから自らの打撃映像まで、成功を追い求める背番号3は熱心な研究を欠かさない。その成果は着実に結果として表れている。金本監督が「練習ではそんなに逆方向にホームランは打っていないんですけどね。試合で出るっていうのが素晴らしいところですね」と、褒めるほど本番に強くなってきた。

 夢はふくらむ。この日は京セラドーム大阪だったが、週明けには本拠地甲子園での戦いが始まる。甲子園で日本人右打者が虎党の待つ右翼スタンドに放り込んだのは、13年新井良が最後。もう5年も前の話だ。今の大山なら…。そして夢の先にあるのは、大山がお立ち台で宣言した歓喜の瞬間に違いない。「優勝を目指して、自分自身しっかり貢献できるように頑張りたい」。頼もしい言葉が確信の証しだ。【真柴健】

 ▼大山をのぞいて、阪神右打者の右方向への直近の本塁打は、17年9月30日に東京ドームでの巨人戦で俊介が記録。17年はメッセンジャーも7月23日、神宮でのヤクルト戦で右方向に本塁打を放っており、同年の虎右打者の逆方向アーチはこの2本だけだった。甲子園では、15年6月28日DeNA戦でゴメスが打ったのが最後。甲子園での日本人右打者に限ると、13年4月30日広島戦での新井良までさかのぼる。