涙、涙のサヨナラ勝ちだ! 「日本生命セ・パ交流戦」は6試合が行われ、DeNAは山下幸輝内野手(25)が延長10回にサヨナラ適時打を放ち、楽天を蹴り落とした。9回2死、4番筒香が完投勝ち目前の岸から同点13号ソロを放ち延長戦へ突入。延長10回は抑えの松井を攻め2死二塁とし、1軍昇格したばかりの伏兵が決めた。山下は一塁を回ってから涙が止まらず、お立ち台でも号泣。チームは交流戦連勝スタートで2位をがっちりキープした。

 お立ち台に上がっても涙が止まらなかった。山下は言葉につまりながら喜びをかみしめた。「もうしゃべれないです…。今までチームに迷惑をかけてきたので、打ててよかった。絶対打ってやろうという気持ちでした」と何度も目頭をぬぐった。

 覚悟を決めての有言実行だった。9回表から途中出場し、迎えた延長10回2死二塁。「『決めてきます』と言って打席に向かいました」。カウント0-2から外寄りチェンジアップを無我夢中で振り抜いた。外野陣が前進守備を敷いているのも気付かない。打った球種も「スライダーだと思っていました。あとからチェンジアップと聞いて、そうだったんだと」。打球が右翼手の頭を越えた瞬間、一気に涙腺が崩壊した。

 悔しさを必死で乗り越えた。「去年、守備であんなミスをして本当につらかった。今日は守備でもずっと緊張していました」。昨年7月26日の阪神戦(甲子園)。2点リードの9回から守備固めで出場も、自身の悪送球から1点差まで詰め寄られた。試合は逃げ切ったが、翌27日に登録抹消。その後もミスから1、2軍を行き来した。今季は3月31日に昇格も、1度もグラウンドに立つことなく4月5日に2軍降格。この日の1軍合流前には「これでダメなら(野球を)あきらめるくらいの気持ちで行ってくる」とファームのチームメートを前に、悲壮な決意を口にしていた。

 だからこそ、延長10回の打席は「打ちたい、打ちたいと思っていた」と隠すことなく明かした。2軍では2ストライクに追い込まれた状況を想定しての打撃練習を黙々と繰り返し「大丈夫だと思える自信がありました」。崖っぷちは最高の見せ場となった。

 負ければ5月月間負け越しの危機を食い止めた。ラミレス監督も「あれだけ泣くに値する活躍。ミスター幸輝が今日のヒーロー」とたたえた。「1軍で絶対ヒーローになる気持ちでやってきた」と力を込めた山下。チームを勢いづけるには十分すぎる、涙の今季初打席初安打だった。【佐竹実】