好調福良オリックスの秘密にヨシノブあり。開幕から低空飛行だったが、5、6月を24勝15敗の勝率6割超で猛烈に巻き返し、1年ぶりのAクラス3位に急浮上。パ・リーグの台風の目になりつつある。日刊スポーツでは好調の象徴で、勝利の方程式の一角を担う高卒2年目の山本由伸投手(19)を直撃。「8回の男」となった若き右腕が、魔球カットボールの秘密を語った。【取材・構成=桝井聡】

 -4月24日に1軍昇格し、セットアッパーとしてフル回転

 山本 (先発だった)昨年はこの時期にやっと投げ出したくらいですから。中6日でも投げていないですし、毎日試合をすることもなかった。今は初めてのことばかりですね。大事なところで投げさせてもらっているので、緊迫した場面をしっかり楽しみたい。そういう気持ちを忘れないようにしたい。

 -現在24試合に登板し、3勝0敗、14ホールド、防御率1・13。快進撃の象徴になっている。昨年との違いは

 山本 (中継ぎを)やっていくなかで大事だと思ったのはお風呂だったり、食事だったり、睡眠だったり。生活の部分で基本的なところが重要になってくると思った。動いた後は食欲がなくなっても意識してたくさん食べる。お風呂にも長く入る。夜も少し早く寝る。野球のトレーニング以外のところを意識するようになりました。

 -昨年9月の日本ハム戦ではエンゼルスに移籍した大谷から空振り三振を奪い「今年一番よかった」と称賛された。直球は今季2軍戦で157キロを計測。150キロを超えたのはいつ

 山本 高校の2年生くらいですね。徐々に150キロ出るようになって。中学の時に背が伸びたんですけど、高校の1年か2年で止まって、そのタイミングで体重が増えてパワーがついた。入学したときは63キロで夏まで練習したら58キロ。ガリガリになっちゃって(笑い)。そこから3年生の時に77キロに。練習に負けないくらい食べてトレーニングをしていました。

 -最速157キロの直球とともに最速148キロの魔球カットボールが注目を浴びる。初セーブを挙げた5月1日西武戦では4番山川が「見たことないカットボール」と発言

 山本 去年12月にキャッチボールで投げ始めたんです。どんどん打たせていけるボールをと思って。去年(のシーズン中)はスライダーだけ。たまにカウント取るときにカットのイメージで投げてたけど、それはスライダーのサイン。今年は握りも全然違うし、イメージも何もかも違います。

 -参考にした選手は

 山本 完全に自己流です。いろいろと聞いたんですけど、やっぱり変化球は人それぞれ。最初はどんどん打たせていきたいと思ったんですけど、思ったよりも感覚がいい。どこの場面でも投げられるようになりました。まさかこんな球速が出るとは…。投げているイメージは確かにまっすぐに近い。

 -新人王の資格も有している。現在6勝のチームメート田嶋と争うことになる

 山本 権利はあるんですけど、それは気にせずいこうと思っています。とにかく楽しむ気持ちですね。最初は中継ぎでと言われたときはビックリした。ただ、すぐに必要とされてると切り替えていました。もし先発に戻ることがあればこの経験もプラスになると思います。

 ◆山本由伸(やまもと・よしのぶ)1998年(平10)8月17日、岡山県生まれ。伊部小時代は「伊部パワフルズ」に所属し、捕手。「東岡山ボーイズ」では二塁手として全国大会出場。都城(宮崎)での甲子園出場経験なし。一昨年のドラフト4位でオリックス入団。プロ1年目は1軍5試合に登板し1勝1敗、防御率5.32。8月31日ロッテ戦でプロ初勝利。177センチ、80キロ。右投げ右打ち。

 ◆山本のブレーク 低空飛行を続けていたオリックスが、ゴールデンウイークを境に上昇に転じた。同じタイミングで1軍に昇格したのが高卒2年目山本だった。5月1日西武戦(京セラドーム)では3連投の守護神増井に代わって、代役ストッパーとして9回に登板。山川、メヒアら主軸を封じてプロ初セーブを挙げた。10代のセーブはオリックスでは95年平井(現投手コーチ)以来、23年ぶりの快挙だった。5月に入ってから7回黒木、8回山本、9回増井の「勝利の方程式」が確立。吉田一、近藤らを含めた強固なリリーフ陣が快進撃の要因となっている。