1年前の屈辱から、はい上がった。全日本で14年ぶりに優勝した東北福祉大(仙台6大学)は昨年、初戦敗退に沈んだ。全国的に無名の四国学院大(四国地区)に散発5安打で0-1の完封負け。敗因は明確だった。大塚光二監督(50)は「大会に入るのに何も準備できなかった」と振り返り、悔し涙も流したと明かした。昨年はリーグ優勝決定日が開幕5日前で、全代表中最後だった。残された時間が少なかったとはいえ、丸腰で勝てるほど全国は甘くなかった。

 相手チームの分析係を務める控え捕手の今西直輝(4年=神戸国際大付)は当時を回想した。「1年前は先を見すぎていて、相手をなめてかかっていました」。手痛い敗戦を教訓に、その後は分析の時間を増やした。今春のリーグ優勝時には投手陣から「充実したデータがあったから、今年は投げやすかった」と称賛された。その高い分析力が今大会にも生きた。

 象徴的なシーンが慶大(東京6大学)との準決勝だった。1点を追う6回2死満塁。9番清水敬太内野手(4年=酒田南)は相手捕手の同じ球種を続けて要求する配球を見破っていた。「頭の中に傾向は入っていました」と3連投となったフォークを仕留めて、2点中前適時打で逆転した。今西は捕手を分析した意図を明かした。

 今西 いい捕手ほど傾向が出ます。先輩で、阪神に入った長坂(拳弥捕手)さんも打ち取るパターンを持っていた。横綱相撲で勝つために、徹底的に洗い出しました。

 高い分析力をベースに打ちまくる打線と、例年以上に整備された投手陣がかみ合った結果の優勝だった。(つづく)【特別取材班】