超人が夢舞台でグラウンドに帰ってきた。右足腓骨(ひこつ)を骨折している阪神糸井嘉男外野手(36)が「マイナビオールスターゲーム2018」第1戦(京セラドーム大阪)で強行出場した。6回1死一塁に代打で登場。二飛に倒れたが、虎の後半戦巻き返しキーマンが、10年連続10回目の大舞台で、予告通りの驚異的な回復力を披露した。試合は全パが7-6で勝ち、通算成績を83勝78敗11分けとした。

 「代打・糸井」がコールされると、場内がどよめいた。もちろん、右足の骨折は完治していない。だが、超人はグラウンドに戻ってきた。「ちょっと迷惑は掛けますが、できる限りやりたい。自分もどれぐらいできるか、分からないので…」。そう試合前に語り、オールスターで実戦復帰を果たした。

 かつての本拠地・京セラドーム大阪の人工芝をゆっくり踏みしめて打席へ向かった。6回1死一塁、日本ハム宮西の初球138キロ直球を見逃すとストライク。ふーっと息を吐いてバットを構えた2球目。真ん中低め138キロ直球を打ちに出て、二飛。「ちょっとまだ、走るのが…」と語るが、足踏みはしない。ベンチに戻る際も、足を引きずることもなく、ダッグアウトに戻った。「打ちたかったですけどね…」。野球人として、夢舞台で快音を響かせたかった。骨折したままの出場とはいえ…。そんな思いが言葉ににじむ。

 後半戦開幕10試合の欠場を回避するため、決死の球宴強行出場。今日14日の第2戦を終えれば、いよいよ大勝負も目前。球宴明け初戦、16日巨人戦からの復帰について、試合後「無理やろ…。何日あると思ってるの」と話しつつも「良くなってないです、ウッソー」とおどけるなど、明るさも見せた。後半戦スタートまで中2日。糸井自身が言葉ににじませるように、後半戦開幕には間に合わないかもしれない。患部の回復ぶりをチェックしながら慎重に復帰時期を見定める。7・16より後にずれ込もうとも、後半戦のキーマンであることは間違いない。

 阪神のチーム打率2割4分3厘、同280得点、同42本塁打はいずれもセ・リーグワースト。糸井のバットにかかる期待は大きい。実際に試合でスイングした意味も小さくはない。試合前には故障後、初のフリー打撃で10スイング。「(打撃は)全然大丈夫です」。約30メートルのキャッチボールも行い、復活への道は歩んでいる。揺るぎないものがある。1日でも早く、チームに戻るという糸井の決意だ。【真柴健】