崖っぷちからの大逆転だ。ソフトバンクが、今季3度目のサヨナラ勝ちを収め、連敗を4で止めた。9回2死から上林誠知外野手(22)が2試合連発となる15号3ランで同点。延長10回1死満塁から松田宣浩内野手(35)が試合を決めた。柳田悠岐外野手(29)が首痛のため今季初めて先発を外れた窮地に執念を見せて借金を回避した。

 歓喜の輪の中に2人のヒーローがいた。上林と松田だ。借金生活がすぐそこまで迫っていた。9回2死二、三塁で3点ビハインド。上林はカウント1-2まで追い込まれた。ロッテ抑え内の5球目はボール球かという低めスライダー。上林は腕をいっぱいに伸ばし拾い上げた。伸びて右中間テラス席へ。「まさか入るとは思いませんでした。必死に食らいついた結果が本塁打になった」。10回に試合を決めた松田は「監督に『任せた』と言ってもらい、勇気をもらった」。中堅左へのサヨナラ打で「鷹の祭典」を彩った。

 上林はこの日の1発に「去年の日本代表のホームランを思い出しましたね」。昨年のアジアCS韓国戦でもタイブレークの10回に同点3ランを放っていた。土壇場で強さを発揮する礎がある。母校・仙台育英の校舎には大きく「逆転の仙台育英」という言葉が掲げられている。「ぼくも、それはわかってやっていますよ」と胸に刻んでいる。試合に出続けながら、昨季は成績を落とした夏場に結果を出している。昨季と大きく違うのは1人暮らしを始めたことだ。上林は「寮までの通勤もないし、ご飯も好きなものを食べています。ストレスは減っていますね」と笑う。「今は1日があっという間に感じる」と充実の日々を過ごしている。

 この日は柳田が首痛のため欠場した。チーム3冠王を欠いた影響か、序盤は苦戦。だが最後に粘りを見せた。上林は「非常に痛いですね。でも、いない中でこうやって勝てた。みんなでカバーしていきたい」。総力戦での3位浮上。工藤監督も「この粘りは選手の持っている力だと思う。みんな信じてやっていってほしい」。まだ鷹たちの火は消えていない。【山本大地】