ど真ん中の絶好球を、ヤクルト山田哲が逃すわけがなかった。0-2の3回2死一、二塁、DeNAウィーランドの直球をバックスクリーンへ。27号逆転3ランに「走者をかえすことだけを考えた。押し込めた分、本塁打になった。すぐ取り返せてよかった」と喜んだ。

 定位置を目指していたプロ3年目のほろ苦い体験が、チャンスへの執着心の原点だ。13年6月15日オリックス戦の当日、39度超の発熱でベンチを外れ、試合は大阪の宿舎でテレビ観戦した。後日、当時現役だった宮本ヘッドコーチに「チャンスは逃すなよ」と声を掛けられた。何げないひと言から、絶好機は何度もこないと思い知った。5年たった今も「覚えています。僕も若かったですね」と忘れず、金言を胸にしっかり刻んでいる。

 ウィーランドには試合前まで6打数無安打で「何とかやり返そうと思っていた」。集中力を研ぎ澄ませ数少ない好機をモノにした。2試合連続1得点だった打線も目覚めさせ、バレンティンとは今季10度目のアベックアーチ。通算9勝1敗のデータ通り、主砲のそろい踏みで連敗を3で止めた。「打ち勝つ野球をしようと野手はみんな思っている。結果にこだわってやりたい」。山田哲は、まだまだ打って打って、打ちまくる。【浜本卓也】