打ち合いを制したのはソフトバンクだ。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第5戦は、ソフトバンク柳田悠岐外野手(30)が1回の決勝3点適時二塁打と6回のソロで4打点の活躍。球団初となるシーズン2位からのCS突破に成功した。4番打者は5試合で打率4割5分、2本塁打、8打点と暴れMVPを獲得した。敗退した西武辻発彦監督(59)は悔しさの余り号泣した。ソフトバンクは27日から始まる広島との日本シリーズに進む。

マイクの前に立った辻監督は両手で頭を抱えた。下を向き、言葉が出ない。目は真っ赤。おえつを漏らした。昨年、父を亡くした時にも人前では涙を見せなかった九州男児が衆人環視で泣いた。10秒以上。やっと落ち着き、口を開いた。

「悔しいです。まさか今日、2018年のシーズンが終了するとは考えてもいませんでした」

本音だった。自慢の山賊打線がソフトバンクに屈した。しかも、自らが理想とする守り重視、隙を突く野球をしてやられた。

崖っぷちの一戦は誤算で始まった。初回。先発ウルフが先頭上林に初球を右翼線二塁打とされた。明石には死球。グラシアルには初球でセーフティーバントを決められた。無死満塁から柳田の左中間二塁打で、あっという間の3失点。辻監督は「無警戒だった」とセーフティーを振り返った。序盤で主導権を失い、リードできぬまま敗れた。

アドバンテージを除けば1勝4敗の完敗。ソフトバンクとの差を問われ「やっぱり中の投手が強い。本当にタフ」と相手を褒めた。4敗はいずれも先制を許し、一時逆転は1度だけ。短期決戦で目いっぱい投げられると厳しかった。

自軍のリリーフ陣は総じて球のキレを欠いた。辻監督は「期間が空き、調整がうまくいかなかった」と認めた。ファーストステージを横目に1週間、宮崎でフェニックスリーグに参加。投手の調整は基本的に個々に任された。まずは疲労回復に努めた選手が多かったが、リリーフ陣からは「対バッターの試合勘が難しい」との声が出た。野手も秋山、中村らが前日まで不振。チームとしてピークを合わせる点でも、ソフトバンクと経験の差が出た。

悔しさを晴らすのは来季しかない。辻監督は「(2位の)去年の悔しさを今年、晴らした。今年の悔しさは1つ上のレベル。この悔しさをもってチーム力を上げていかないと」と決意表明した。【古川真弥】

◆西武辻監督の息子・泰史さん(観戦に訪れ、セレモニーでもらい泣き)「おやじが泣くところを、初めて見ました」