「SMBC日本シリーズ」はいきなりの死闘だ。2年ぶりに進出した広島と2年連続日本一を目指すソフトバンクの頂上決戦。1回、広島が菊池のソロなどで2点を先制すると、ソフトバンクが5回、デスパイネの二塁内野安打と失策で追いつく展開。両軍投手陣のつばぜり合いが最後まで続いた。その熱い戦いを広島OB、日米203勝のレジェンド黒田博樹氏(43)が独自の視線で見る「特別観戦記」。初戦から延長戦に突入した試合。黒田氏は「わずかなアドバンテージを得たのは広島」とみた。

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まさか、こんな展開になるとは…。昼間、ドジャースとレッドソックスのワールドシリーズをテレビで見ていた。4年間プレーしたチームでもあるし、延長に入ったけれど見始めると最後まで見てしまった。夜にマツダスタジアムに来たのだが、こちらは延長12回引き分け。昼夜で古巣の長い試合を見ることになった。

両軍、ブルペン投手を大量につぎ込み、どうしても勝ちたかった試合だった。それで白星を取れなかったのはともに痛いのだが違った見方もできる。中継ぎ、抑えの投手が初戦からそろって登板することができた、という点だ。

なにしろ日本シリーズの大舞台。どんな投手でも投げるまでは緊張する。それが1戦目から実現し、みんなが好投した。両軍の攻撃陣に決め手がなかったといえばそれまでだが本当によく投げていたと思う。1戦目を見て「このシリーズは簡単には終わらないな」という印象を持った。

広島にとって先発大瀬良の好投もプラスだろう。実は少し不安視していた。試合前の投球練習中、カットボール、スライダーが指に引っ掛かっていたからだ。

そう思っていたら最初の打者・上林に投げた1球目は内角へワンバウンドするボールになった。しかし上林はどういう考えだったのかは分からないが、これに手を出し、空振りした。

どんな投手でも立ち上がりは緊張する。さらにビッグゲームになればなるほど投手は最初のストライク、最初のアウトが少しでも早く欲しいもの。大瀬良にとって、これはかなりラッキーだった。結果もそうなった。

カウント2ボール1ストライクになった後の4球目。これも高めの球を上林はファウルした。見極めていれば先頭打者をストレートの四球で出塁させていたところだ。だが結局、三振に切り、大瀬良は最初のアウトを取れた。

まず欲しい1死を幸運な形で取れたことにより乗っていけた。4回2死まで1人の走者も出さなかったこともあり、思い切りのいいフォークを織り交ぜて、いいイメージで投げることができた。投げている姿が頼もしく見えた。大瀬良は中4日で第5戦に投げる可能性もある。5回で降板したが日本シリーズ開幕投手として最低限の仕事は果たしたといえる。

この引き分けがどちらに有利に働くかは何ともいえない。だが、28日以降にもつれて3勝3敗になった場合、ルール上、第8戦はマツダスタジアムで戦う。それを考えれば地元の試合が増えた広島がほんの少しだけアドバンテージを得たような気はする。(元広島投手)

◆第1戦は延長12回、2-2の引き分け。日本シリーズの引き分けは中日とロッテが対戦した10年第6戦以来、8年ぶり8度目。いきなり第1戦が引き分けは75年阪急-広島戦、86年広島-西武戦に次いで3度目となり、すべて広島が絡んでいる。第1戦に引き分けた広島は75年△●●△●●、86年△○○○●●●●と、過去2度とも日本一を逃したが、今年はどうか。