広島鈴木誠也外野手(24)が、日本シリーズ初本塁打を含む2打席連発など、3安打猛打賞を記録した。最大6点のリードを許しながら、バットで諦めない意思表示。若き4番に引っ張られ、ソフトバンクを最後まで追い詰めた。戦績は1勝1敗1分け。終盤に見せた反発力をつなげ、ソフトバンクのシリーズ本拠地連勝を止めたい。

敗戦に悔しさをにじませながらも、球場を後にする鈴木の視線は、力強かった。「最後まで諦めず、ギリギリのところまでいけた。負けてしまったけど、簡単に勝たせてしまうと、もっと勢いづかせてしまう」。ヤフオクドームで最後の最後までソフトバンクを追い詰めた。今シリーズ初めて先制点を許す展開。一時は6点のリードを許した。それでも1点差に迫り、9回は一打同点の好機をつくった。驚異の粘りを見せた打線をけん引したのは、若き4番だった。

ソフトバンク先発ミランダに2打席凡退で迎えた6回。「チェンジアップが良かった。低めに目付けしてもクルクル回る」。低めを完全に捨てたことで、カウント1-1から浮いた真っすぐに素直に反応できた。シリーズ初アーチが右翼席に突き刺さった。点差が6点に広がった8回は、加治屋の代わりはなを捉えた。真っすぐを今度は左翼席へ。25年ぶり優勝を決めた16年9月10日巨人戦以来の2打席連発。諦めない姿勢を示し、安部の満塁本塁打でさらに4点をかえした。

一昨年の日本シリーズは打率2割2分2厘、0本塁打、2打点で終わった。だが、今年は全3試合で複数安打を記録し、打率5割7分1厘、2本塁打、5打点。日本シリーズに合わせて家族が広島入り。母の手作り料理に舌鼓を打ち、福岡にも家族は同行。前夜は家族で市内の焼き肉店に行き、だんらんのときを過ごした。重圧を和らげ力に変え、大きな舞台で暴れた。

戦績は1勝1敗1分けとなった。ソフトバンクにシリーズ本拠地連勝を10に伸ばされても、下を向く必要はない。緒方監督は「すごい集中力を見せてくれた。また明日、自分たちの野球をする」。鈴木も「負けたので明日、切り替えて戦いたい」と言った。終盤の猛追は、次戦につなげてこそ意味がある。【前原淳】