オリックスを自由契約になった金子千尋投手(35)の日本ハム入りが10日、正式に決まり、札幌市内のホテルで入団会見を行った。1年契約で年俸は推定1億5000万円プラス出来高払い。背番号はオリックス時代と同じ「19」に決まった。自身を「35歳のルーキー」と称した14年沢村賞右腕は、登録名を「金子弌大(ちひろ)」とすることを発表し、心機一転、新天地での復活を誓った。

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高さ約25センチのマウンドに立つ金子が光の当たらない世界に興味津々だった。1度目の最多勝をとった10年のオフ、プロフリーダイバーに出会った。重りを使わずフィンの力で潜水する種目で水深115メートルのアジア記録を持つ篠宮龍三氏。そのストレッチ法を学んだ。「例えば伸ばしたい箇所を意識すると、伸ばしたいのに実際は筋肉が萎縮するというもの。今までと逆の考えだし、ヒントにしてます」。水圧で内臓が押しつぶされる可能性もあり、わずかな体の不調が命の危険につながる競技。そんな第一人者から話を聞けたと喜んでいた。

ただ、見た目には分かりにくい感覚の話。「自分は体が硬い。体の強化より柔らかくしたい」と参考にしてコツコツやっていたが、原稿にならなかった。当時の清川投手コーチは「飛び抜けて態度で示す投手と違うし、派手なことはしない。しっかりやるという感じ。一喜一憂しない」と評していた。投手練習が午前9時アップ開始ならコーチ陣は2時間前に練習場に来るのだが、金子はその時には着替えて汗を流していた。若手がそれを見習い、ウエートトレーニングをする選手が増えていった。道程に派手さはなくても態度で示し、結果で示す男だった。【10、11年オリックス担当 押谷謙爾】