オープン戦とはいえ、悠然と構えられない。矢野阪神が平石楽天に防戦一方で完敗した。

期待の若手をズラリと並べた布陣。3回、新人木浪の右前タイムリーで奪った1点だけ。必勝リレーにも歯が立たず、4安打で完敗した。主力を温存した若手のアピール機会だが、覇気は空回り…。矢野監督も嘆くしかなかった。

「寂しいよね。はじめはいい競争が野手のなかで、できている形だったけど、現状、そういう形になっていない。もっともっと(若手に)出てきてほしいのは、ずっと思っていること」

開幕投手有力で通算122勝右腕の岸に腕試しするはずが、洗練された投球術に惑わされた。3点を追う2回。4番陽川は1球も振らず、外角低め速球に見逃し三振。遊撃レギュラー有力の北條も打ちに行けず、ファーストスイングで外角スライダーを引っ掛けて三ゴロに倒れた。カーブやチェンジアップも絶妙にまぶされ、手も足も出ない…。

矢野監督の目線は高い。「今日、ファーストストライクをほぼ振らせてもらってない。いいコースでいい球。タイミングも緩急もあるし、そんなに簡単に振らせてくれない」と相手の好投を認めつつ、工夫を求めた。「そんなこと言っていたら、いつまでも、なかなかいい投手を攻略できない。何か自分で仕掛けていくところはもっと欲しい」。タフで、したたかでなければ、1軍で活躍できない。

守備もちぐはぐだった。2点を先制された1回、なお1死一、二塁。望月のけん制球で196センチの二塁走者ブラッシュは帰塁できなかったが、連係プレーが合わず三盗を許した。続く一、三塁では二盗を狙った一塁走者銀次を一、二塁間で挟んだが、その間にブラッシュに生還された。オープン戦5連敗で、いまも「最下位」の呪縛は解けない。チーム打率は1割8分6厘まで降下。チーム防御率も6・08に悪化し、いずれも最下位だ。

福留、糸井らの本格参戦を前に、その地位を脅かす若手が現れない。指揮官は言う。「もっとイキのいいスイングや打撃を見たい」。若手のハツラツさが出ない限り、不安は消えない。【酒井俊作】