広島が延長10回に力尽きた。守護神中崎や中田が踏ん張れず、2投手で12失点。開幕4カード連続の負け越しが決まった。しかし1番田中広輔内野手(29)が初回に28打席ぶりのヒットを記録し、先制のホームを踏んだ。暗くなっているヒマはない。マルチ安打のリードオフマンが反攻のキーマンになる。

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2球で止めた。「1番遊撃」で先発出場の田中広輔内野手は、1回裏の第1打席。ヤクルト・ブキャナンのチェンジアップをたたいて二遊間を破った。28打席ぶりの快音に、本拠地のスタンドは大きな拍手。いい流れをつくると、ランドエンドヒット(結果は一失)でチャンスを広げ、野間の二ゴロで生還した。自身3試合ぶりの得点が先制点となり、1番としての役割を果たした。

長いトンネルにはまっていた。3日中日戦から6試合、27打席連続で安打が出ていなかった。それまでのプロ最長は、まだレギュラーに定着していない16年5月19日から24日までの23打席連続。自身初の経験にも「始まったばかり。そこまで落ちることはない」と懸命に前を向き続けた。

常に準備は怠らなかった。本拠地ナイター試合ではグラウンドに一番乗り。入念なウオーミングアップからロングティーで体全体を使ったスイングを体にたたき込む。JR東日本時代から同じトレーニングを休日以外は継続。579試合連続フルイニング出場と、現役セ・リーグ最長記録を更新し続ける肉体と精神力を維持する。

まだ本調子とはいえない。ただ、3連覇の打線の切り込み隊長を務めた田中の役割は安打や四球を選んで出塁するだけではなかった。球を選び、ファウルで粘り、相手先発に球数を多く投げさせることで、球の軌道や調子を味方ベンチに伝える役割もこなしてきた。開幕から10試合は初球打ちの打席もありながら、1打席目に投げさせた総球数は49球。1打席約5球。だが、長いトンネルは積極打法で抜けた。

田中はトンネルを抜けたものの、チームは3連敗。開幕から4カード連続負け越しが決まった。過去に開幕4カード連続負け越しから優勝した球団はない。歴史を塗り替えるためには、コイの切り込み隊長の完全復活は欠かせない。【前原淳】