入団から4年目、待ちに待った瞬間だった。阪神青柳晃洋投手(25)がプロ初完投を完封で飾り、今季2勝目を挙げた。持ち味の打たせて取る投球で、中日打線をわずか5安打に抑え、129球を投げぬいた。阪神が「平成」で最も鬼門としていたナゴヤドームで、平成生まれの右腕が最後の勝利をもたらした。

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8回のマウンドに上がる直前、青柳は矢野監督から声を掛けられた。

「任せたぞ」

自信と覚悟を、その一言にもらった。2-0の8回、先頭遠藤の左前打から1死一、三塁のピンチ。「自信を持って勝負することができました。任せてくれているので、絶対ゼロで帰って、チームが勝てるようにやっていこうと思っていました」。平田に119キロのスライダーを投げ、初球で併殺に打ち取った。

9回のチャンスも青柳はそのまま打席に立った。続投への強い決意。指揮官の執念は右腕に伝わった。そして5安打完封。そこで見た景色は初めてのものだった。ベンチへ戻ると、矢野監督がハグで出迎えてくれた。「ありがとう!」「ありがとうございます!」。大きな白星に、青柳の胸は熱くなった。「去年1年、2軍で矢野さんに教わった野球が、今日の結果につながっていると思います。こみあげるものがありました。何て言っていいか分からないですけど、すごくうれしかったです」。

矢野監督の言葉が何度も青柳の背中を押した。昨季は長らく2軍で過ごしたが、福原投手コーチから「7割の力で投げる」投球を教わり、9月から1軍で4戦に先発。1勝も挙げた。「今年の後半の投球はいい形で投げられたんじゃないの?」。矢野監督の言葉は指針となった。今季初先発した巨人戦では、2本の本塁打を浴びて敗れた。「今回はいい勉強になったな。次回に向けてやっていこう」。降板後のベンチですぐに声を掛けてくれた。

平成の時代、猛虎にとって、ナゴヤドームは敵地で最も勝率が低い。いわば最悪の鬼門だ。記録に変わりはないが、青柳の力投でカード勝ち越し。最後を締め、甲子園6連戦へ流れを作った。「初めての経験でしたけど、矢野監督に任せたと言ってもらった。ピッチャー陣を引っ張っていってほしい、というコメントも見ていたので、そういうのに対しての気持ちで乗り切れました」と安堵(あんど)の表情を見せる。矢野監督は「全てを青柳に助けてもらいました。青柳さまさまです。(9回の打席は)迷ったね。ただ俺の中で『青柳に任せたい』という気持ちのほうが強かった」と振り返る。強固な信頼関係を武器に、平成最後の甲子園に臨む。【磯綾乃】