本調子じゃなくてもチームを負けさせない。阪神先発西勇輝投手が力投で好調虎をさらに加速させた。正念場は4点リードの7回だ。高橋と伊藤康の連打で無死一、三塁とされ、福田の併殺打の間に3点目を献上。その直後には井領に右翼へ二塁打を浴びたが、続く平田を外角スライダーで右飛に仕留めてピンチを脱出。右手を握りしめて雄たけびを上げた。

「今日は全体的に調子は悪かったけど、悪い中でどうゲームを作るか。梅野がいいリードで引き出してくれて、微調整しながら、粘ることができた」

2回にはビシエドの5球目で左足をひねるようなアクシデントもあったが、投球を続行。終盤の危機で傷口を最小限に食い止め、7回3失点と踏ん張った。球のキレ、コントロールともに本来の投球ではなかったが、そのなかで手にした価値ある3勝目だ。

バットでも打線に火を付けた。マルテの2ランで同点に追いついた2回は、2死無走者から中日又吉の129キロスライダーに食らいついて三塁線へ。西の安打から近本、糸原の3連打となり、自ら勝ち越しのホームを踏んだ。「振ったら当たりました!」と謙遜したが「9人目(の野手)として、守備もそうですし、微力ながらでも貢献したい」。ファア・ザ・チームの思いが執念の一打につながった。

グラウンド、ベンチ、ロッカー…。どんな場所でも若手投手を優しく見守る。「暗くなり過ぎてもよくない。オリックスの時もそうだったけど、若い選手はほぐさないと。目に見えてパフォーマンスが落ちる」。たわいもない雑談から調整法、配球に至るまで。プロ10年間で培ったノウハウを惜しげもなくトラの若手にも伝える。若い選手が多い先発陣の好調は、西の加入が無関係ではない。

8日までの12連戦を8勝3敗1分けと快進撃で終えても、チームの勢いは止まる気配はない。これで本拠地甲子園の勝率も5割に復帰。矢野監督は「甲子園の本拠地でこれだけのお客さんが入ってくれたら、もちろん喜ばせたい」とご満悦だ。西も「みんなが一丸となって戦えば、いいチームになる」と笑顔。貯金も今季最多の3。同率で2位ヤクルトに並んだ。【桝井聡】