役者が違った。日本ハム中田翔内野手(30)が5、7回に2打席連続本塁打を放ち、延長10回サヨナラ勝ちでの7連勝に導いた。5回の13号ソロ、7回の同点14号2ランともに追う展開の中で効果的で、日本ハム清宮とヤクルト村上のスラッガー対決に注目が集まる中で貫禄を示した。首位楽天が敗れたためゲーム差は0・5に接近。絶好調の4番を中心に首位をうかがう。

中田が若きスラッガー2人から、主役を奪った。1発目は、2点を追う5回の第3打席。ヤクルト近藤から左中間へ2試合連発となる13号ソロ。静かにダイヤモンドを1周した。理由があった。「1打席目が全て。今日、負けていたら自分の責任だった」。初回無死満塁で遊飛。後続も倒れ、無得点スタート。直後に上沢が村上にソロ本塁打を浴びた。「(先発の)上沢に申し訳ない」。ミスを取り返したい一心だった。

再び2点を追う7回も同じ気持ちだった。1死一塁でハフの初球、129キロのチェンジアップを逃さなかった。2打席連発の14号2ランが、値千金の同点弾。「正直、引きずっていた」と価値ある2本のアーチを描いても、反省ばかり。1試合2本塁打は、自身2年ぶり。最大5点差を追いつき、大田の犠飛でサヨナラ7連勝を呼び込んでも、「今日は1打席目を反省したい」。球場を後にするまで主将の責任感を口にした。

試合前から清宮、村上の高卒2年目の大砲対決がクローズアップされていた。目の前で豪快な本塁打を放った村上には「すごかった。2年目で、あれだけ振れることがすごい。清宮と同じくらいすごい」とたたえた。

かつて、若き日の自分を振り返ったことがある。「オレなんか、1年目は1度も1軍に上がれなかったからね」。ルーキーイヤーは左手有鉤(ゆうこう)骨を骨折するなど昇格を果たせず。オフの契約更改交渉の席では球団幹部に「中田翔は高校野球のネームだから」と言われた。中田は「まだまだプロでは通用しないという意味だった」。厳しさを味わった過去がはい上がる糧となり、今がある。

昨季の交流戦の打点王が、頼もしく2本塁打3打点の好スタートを切った。最近10試合で6発。チームもつられるように急浮上している。「チーム状態もいいからこそ、勝ちにこだわっていきたい」。主将の意地が、白星をたぐり寄せた。【木下大輔】