日本文理大・藤野幹大投手(3年=福岡第一)には、ボテボテの当たりが災いした。1-1の9回2死三塁。大商大の代打曽根を打ち取ったはずが、決勝点を許す二塁への適時内野安打となった。

「相手の投手にだけは負けないように、と思っていたのですが。ああいう形で点になったので悔しいです」そう話す顔は、もちろん残念そうだったが、どこか充実感も漂っていた。ドラフト候補の大西と互角に投げ合った。全国の大舞台だが、実は公式戦初先発。1週間前に元DeNAの吉川輝昭コーチから告げられ、「素直にうれしかったです。どこかで先発したいとは思っていたけど、まさかここで。チームに勢いをつけたいと思いました」。気合を入れて臨んだ。

マウンドに立つ191センチは、存在感たっぷりだ。サイド気味の振りから、140キロ前後の直球に、スプリット、スライダー、チェンジアップを交えた。大商大打線に的を絞らせず、散発6安打2失点。三振は11個、奪った。

長身を生かし、投げ下ろそうとは考えなかった。中学3年の時、福岡の筥崎ジンジャーズで内野手から投手に転向したが、その時からサイドスローだった。「野手は横手で投げるので」その形を、そのまま投球に用いた。上手投げにすると、球がバラバラになった。サイドの方がしっくりきたのだ。高校で徐々に肘の位置を上げ、今の位置になった。「スリークオーター…、ですかね?」。実際はスリークオーターとサイドの間ぐらい。ロークオーターと呼べそうだ。

長身は母親譲り。バレーボールの元選手で、178センチある。藤野は中3で171センチだったが、高校3年間で一気に20センチ、伸びた。ただ、腰は低い。「去年も(全国選手権で)先輩が多い中、投げさせてもらって、自分が負け投手になりました。借りを返そうと思ったんですが。来年こそ、自分の力でチームを勝たせたいです」と謙虚に、だが、力強く誓った。

目標の選手は、エンゼルス大谷翔平。毎日のように動画を見ている。「まだ実力不足。もう少し力をつけて」。最後まで腰は低かったが、将来的には上の世界に挑みたい気持ちを口にした。【古川真弥】

中村寿博監督(藤野に)「うまくいって5回ぐらいと期待してましたが、本当に良い投球だったと思います。順調に成長している」