“燕のゴジラ”が、心技体の成長を見せつけた。ヤクルトの高卒2年目村上宗隆内野手(19)が、プロ初の満塁本塁打を放ち、20号の節目に到達した。先制の適時打を含めて5打点を荒稼ぎし、セ・リーグトップの61打点に伸ばした。若き4番がチームに5月11、12日の巨人戦以来、約2カ月ぶりの連勝をもたらし、15カードぶりの勝ち越しも決まった。

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笑みがこぼれ、自然とガッツポーズも出た。村上は「試行錯誤が実った。点を取りたい気持ちがすごくあった」と話した。5回2死満塁。1-1から広島ローレンスの内角低めツーシームを右翼席へ運んだ。プロ初の満塁弾で、94年松井以来となる高卒2年目以内での20号到達。ワールドシリーズで本塁打を放つ姿をテレビで見た「スーパースター」に肩を並べた。

心は、苦しみを経て成長する。6月20日ソフトバンク戦から7試合本塁打なし。8打席連続凡退もあった。「ストレスがたまります。僕も人間ですから。打つことでしか解消されない」。言い聞かせるように言った。吹っ切るように「新聞に載れるように今日、打ちます」と宣言した日に有言実行した。

技術の成長は、20号の過程に詰まっている。シーズン前から速球への対応を指摘されていた。早出では160キロの打撃マシンを通常のマウンドの距離より近づけ、金属バットで打ち返す練習に取り組んだ。5月29日広島戦では、大瀬良の149キロ直球を右中間へ運ぶ3ラン。目が慣れると、タイミングが合い始めた。

相手からのマークが厳しくなると、カーブでカウントを整えられた。今度は、早出のフリー打撃で宮本ヘッドが投手役を務め、直球に時折カーブを交ぜて投球。手が出るよう特訓した。6月12日楽天戦で、熊原の118キロカーブの落ち際をすくい、右翼席へ。左投手を苦にせず、逆方向へも6本。内角も外角も打てる怖い打者になりつつある。

体も1軍に慣れている。早出から試合後の素振りまでフルメニューをこなす頑健さ。ベンチではスコアラーが作成した情報を読み込む。青木は「いろんな経験をして、すごく考えている」と認める。村上は「僕のせいで負けた試合もある。チームを引っ張るには守備も、打率も2割3分じゃダメ」。燕のゴジラの大きな足跡は、球史に確かに刻まれていく。【保坂恭子】